2020 Fiscal Year Research-status Report
Peacebuilding through criminal justice: a new challenge on governance
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20K01539
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
望月 康恵 関西学院大学, 法学部, 教授 (10316151)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際刑事裁判所 / 平和構築 / 被害者救済 / 賠償 / 信託基金 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、国際刑事裁判所による被害者救済制度(賠償命令と支援活動)について検討することにより、国際刑事裁判所の機能と取組み全般についての理解をめざした。 第一に、被害者救済制度の発展の前提ともいえる、国際人権法違反による被害者に関する国際法上の諸原則の内容について探り、諸原則が制定されてきた時代的背景と被害者に着目する潮流について理解を深めた。 第二に、国際刑事裁判所が下した賠償命令と、賠償命令に基づいた支援活動の具体例について第一次資料を検討した。賠償命令は4件下されており、各判断を検証しながら、それら賠償命令の内容を分類することにより、賠償命令の機能の特徴を明らかにした。さらに賠償命令を実行する信託基金に関して調査を行い、これまで国連等により設立されてきた信託基金との機能上の違いについて理解を深めた。 第三に、国際刑事裁判所の被害者救済制度としての支援活動について、従来の開発活動や人道支援とは異なった機能を有すること、また国際刑事裁判所による賠償命令そのものが、被害や被害者に対する、公的な「表出」機能を有することを理解することにより、国際刑事裁判所による平和構築機能の一側面を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年には、研究の初年度として、オランダの国際刑事裁判所(ICC)において実務家との意見交換を予定していたが、新型コロナウィルス感染症の影響により、海外出張が行えず、現地調査に基づいた研究部分の進捗に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、国連の二つのアドホック裁判所(旧ユーゴスラビアおよびルワンダ)のうちいずれかに着目し研究を行う。第一に、アドホック裁判所から任務を引き継いだ残余メカニズムへの機能の特徴を検討する。これにより、アドホック裁判所の任務の終了とその遺産の具体例について、また残余メカニズムに移譲された機能の意義を探る。第二に、アドホック裁判所による判断が、旧ユーゴスラビアあるいはルワンダの統治機構に対する変更を迫る内容であったのか否か、またその背景について検討する。以上の考察により、刑事裁判所の判断が、国際社会および現地社会において判例として法的な意義を有することに加えて社会的な意義があること、とくに、現地の制度に実質的な変更をもたらす、平和構築としての機能を模索する。2021年度の研究を進めるにあたり、状況が許せば、残余メカニズムへの調査および現地への調査を行い、刑事裁判に携わっていた実務家などとの意見交換を通じて、国際的な刑事裁判の、現地社会における機能についてもさらなる理解を深めたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は、コロナの影響により海外出張による現地での聴き取りや国内への学会出張が行えなかったことが理由である。2021年度に海外出張を計画するか、あるいはインターネットを通じての聴き取りを実施するか、もしくは文献調査をより重点的に実施することにより、研究を進める予定である。
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