2023 Fiscal Year Research-status Report
Peacebuilding through criminal justice: a new challenge on governance
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20K01539
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
望月 康恵 関西学院大学, 法学部, 教授 (10316151)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 平和構築 / 国際人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、平和構築における国際人権規範の役割と意義、課題について考察を深めた。国家のガバナンスにおいて、とりわけ紛争後には、国際人権規範が基盤とされ、同規範に基づいて、民主的な制度の設立、人権規範の社会への定着、さらに紛争中の人権侵害行為に対する訴追および処罰が目指されている現状と課題について検討した。 まず、国際人権規範の発展により、国家の権利に加えて、その責任として人権の保護および促進が捉えられるようになってきたこと、国家の基盤として人権規範が位置づけられるようになってきたこと、それゆえに、紛争後の平和構築においても人権規範の定着が国際社会により求められてきたことについて、検討した。さらには、紛争後の平和構築として、紛争下に生じた人権侵害行為について、特に指導者に対する訴追と処罰が求められてきていることを論じた。 他方でこのような人権規範の定着に関して、国際社会において求められることと、現地社会主導の平和構築の実践との間に対立が生じうることについて着目した。すなわち、現地主導の平和構築により、紛争下での人権侵害行為について対応する制度が作られず、よって紛争下での犯罪行為について不処罰とすることにより、紛争当事者が紛争後にも指導的な地位を維持する事例について指摘した。 紛争後の社会において、犯罪行為の処罰が行われず正義が追及されないことは、現地社会の民主的な手続きを通じて行われるものでありながら、国際人権規範の定着を妨げうることについて、国際社会が主導する平和構築の限界として指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、想定していた現地調査などが実施できなかったことが研究が研究が遅れている一要因である。また研究を進める中で、研究の射程について拡大する必要性を理解した。すなわち、本研究が想定している国際的な刑事裁判所における平和構築に関しては、国内の刑事司法機関による機能と役割についての分析も求められることが改めて確認された。暫定的な国際的な刑事裁判所による任務の終了が、国内の司法機関への事件の移管を促すこと、またその前提として事件の移管を可能とする国内の司法機関における管轄権行使に関する検討が必要であることについて確認された。加えて、普遍的管轄権の行使に関する研究の発展、国家実行の進展も見られ、これらについても検討が求められる。延長期間においては、国内の司法機関における普遍的管轄権の行使の実態について検討を深め、また国際法における普遍的管轄権の理論の進展を探ることにより、国際的な刑事裁判所による平和構築機能について検討を深める。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、国際社会における、普遍的管轄権の範囲および適用に関する国際法の議論に着目し、また国家実行を検討する。具体的には普遍的管轄権に関する学説を検討し、また国際司法裁判所の判例を探り、普遍的管轄権の理論の変遷を探る。次に、普遍的管轄権の適用状況について、国家実行および国家の見解を検討し、慣習国際法上の位置づけについて考察する。特にアジア地域における普遍的管轄権の事例を検討する予定である。普遍的管轄権に関する議論およびその進展については、欧州を中心に実践され、また論じられてきた。これに対してはアフリカ地域からの批判もなされた。アジアに特化した研究により、普遍的管轄権に対する従来の主張に対して、新たな視座を提供することができる。この研究を通じて、普遍的管轄権が特定の地域に特化した権利として位置づけられるものではなく、普遍的であることを論じる。また普遍的管轄権の行使に関する変遷を明らかにすることにより、国内の裁判機能についての考察を深める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍等の影響により、当初予定していた海外での聞き取り調査及び学会報告などが実施できなかったことが要因である。また国際社会の状況の変化に鑑みて、研究を進めるにあたり、研究の射程について修正が必要となったことにより、研究を継続する必要性が生じた。 次年度使用額は、国内外の学会への参加旅費、研究資料の購入費等に充てる。、
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Research Products
(1 results)