2022 Fiscal Year Research-status Report
現代中国の対台湾「統一戦線」戦略の史的研究―国民党戦犯処理の思想と史的展開の解明
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20K01540
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
大澤 武司 福岡大学, 人文学部, 教授 (70508978)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中華人民共和国 / 戦犯処理 / 統一戦線 / 国民党戦犯 / 台湾統一工作 / 寛大方針 / 両岸関係 / 台湾海峡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国の内政・外交において極めて重要な位置を占める「統一戦線」戦略(統戦外交)という中華人民共和国(以下、中国)ならびに中国共産党の思考・行動様式に関する実証的な事例研究を進めるものである。 2022(令和4)年度も引き続き新型コロナによる国内・国外への渡航・移動制限などの影響を受け、本研究の主軸となる計画であった海外ならびに国内における史資料調査などが行えない状況が続いた。そのため、引き続き専門書店を通じた中国・台湾などからの史資料購入ならびにCNKI(中国語文献検索データベース)などを有効に活用した資料・論文調査・収集を進めているが、新規史資料の調査・収集には限界があり、これまで獲得した史資料の整理・翻訳・分析作業などを中心に本年度も研究作業を進めてきた。 なお、これまでの研究作業から、(1)中国共産党(特に比較・対照、ならびに今日的意義の考察を行う基礎として、習近平政権時代)による歴史問題(戦犯処理問題などを含む)に関する諸政策の分析、ならびに(2)中国共産党(中国人民解放軍)の戦犯俘虜改造政策に関する考察をさらに深めるための各軍区の「集訓団」施設の情報収集・分析、(3)被処理対象となった国民党・政府・軍関係者自身による戦犯処理、すなわち中華民国の対日戦犯処理に関する資料調査・収集なども、あわせて進めることで、諸々の厳しい制約がある状況のなかでも、所定の研究目的を達成するため、研究を進めている。 特に2022(令和4)年度は、(1)に注力し、(財)日本国際フォーラムでの研究会に引き続き参加し、報告ならびに論稿執筆を進めるほか、(2)に関しては、1950年代にいわゆる「中共地域」から引揚げてきた日本人からの聴取資料における「集訓団」施設の情報調査・収集・分析などを行うため、その基礎となる関連資料集の監修・刊行などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022(令和4)年度は、新型コロナによる渡航・移動制限が緩和され、国内での史資料調査や研究交流については実施可能となり、本研究で得た研究成果の積極的な情報発信のため、関係するシンクタンクや外務省などに出張するなどを実施することができた。ただ、国外、とくに当初、研究計画に含めていた中華人民共和国での調査については、新型コロナによる渡航制限の影響もあるが、これに加えてさらに習近平政権下における外国人による中国国内の資料調査・収集に対する厳しい制限が続いているため、現時点でも実現できてない。 他方、このような状況を打開するため、新たな史資料の調査・収集を行う前提として、2023年2月から4月にかけて開催された(財)東洋文庫主催のオンライン講座「東洋文庫アカデミア 現代中国の海外流出資料とその活用―『中共重要歴史文献資料匯編』の可能性」(全5回シリーズ)に参加することで、オーストラリアやアメリカの図書館に所蔵される『中共重要歴史文献資料匯編』の調査・収集に関する情報を入手し、本(令和5)年度や本研究に続く研究をさらに進めていくための検討材料とするなど、研究のさらなる展開を見据えた作業を続けている。 また、国民党戦犯・捕虜の収容機関(政治教育機関)に関する情報を調査・収集するため、戦後中国からの引揚者に対する聞き取り調書を資料集として監修し、第1回配本分(5巻)を刊行するなど、研究成果の発信を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初の計画では2022(令和4)年度に完了予定であったが、新型コロナの影響により、国内・海外渡航が大幅に制限されたことから、2023(令和5)年度までの期間延長を申請し、承認を得ている。本(2023)年は、世界的にも緊急事態宣言が終了され、さらに5月8日以降は、日本国内でも同感染病が第5類扱いへと移行になることから、昨年度以上に史資料調査・収集、ならびに研究交流に積極的に取り組むことができると考える。なお、特に本年度、重点的に取り組む予定であるのが、「現在までの進捗状況」の項目で述べた『中共重要歴史文献資料匯編』の調査・収集の可能性の検討を進めていきたい。同資料の所蔵図書館がオーストラリアやアメリカとなっていることから、海外渡航によるその調査・収集の可能性について情報の収集を行い、可能であれば特に1950年代から70年代にかけての「公安会議」関係資料について、現地での調査・収集を行えればと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響による旅費(特に国外旅費)の執行不能が主な理由である。なお、研究期間の延長が承認されたため、2023(令和5)年度が研究実施の最終年度となっている。海外における関連史資料の調査・収集について、研究費の残額を考慮しつつ、その可能性について検討できればと考えている。
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