2020 Fiscal Year Research-status Report
Optimal Organization for Information Aggregation, Transmission and Decision Making
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20K01544
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
千葉 早織 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (50770880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 一三 立命館大学, 経済学部, 教授 (60401668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 双方向の情報伝達 / 組織運営 / チープトーク / 国際政治学への応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の2研究について、進展があった。
研究1.“Two-sided Strategic Information Transmission”は、意思決定者(例えば、経営者などの組織における上位権限者)とその他の利害関係者(例えば、一般の従業員)の双方が最適な意思決定についての情報を有する場合を想定する。そして、この二者間の双方向コミュニケーションが、意思決定、及び、期待利得に与える影響を分析する。そして、伝統的なCrawford & Sobel(Econometrica 1982)のゲーム理論チープトークモデル(利害関係者のみが情報を持ち、一方向コミュニケーション)の拡張モデルを確立すること、及び、最適な組織体制の構築・分析に知見を与えることを目指す。研究代表者と研究分担者による共同研究である。
研究2. “Domestic Audiences as an Enforcer of International Agreements”は、例えば、北朝鮮の非核化をめぐる米国・北朝鮮間の交渉のような、一方が他方に協調行動を取らせようとする二国間交渉のモデルを構築・分析する。双方が(例えば、北朝鮮についての)私的情報を保有する状況を考え、この非対称情報が交渉の成立に与える影響、そして、その影響(悪影響ならば)を緩和する手段を、双方向の情報伝達を伴う契約理論モデルの枠組みで考察する。加えて、国際政治学者が近年、関心を高めている「観衆費用」(例えば、自国民の評価・期待が政府に与える影響)にも着目し、国際交渉において公開外交と秘密外交が使い分けられるのは何故か?との問いにも答える。研究代表者、研究分担者、及び、国際政治学者の岩波由香里(3月まで大阪市立大学、4月より東京大学)氏による共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績概要」に記載の各研究について、現在までの進捗状況は以下の通り。
研究1については、先ずは、代表的な一様分布・二次形式利得関数(Uniform Quadraric)の個別例を用い、二者の情報が加法的、或いは、乗法的に最適な選択を決める場合(例えば、投資額を決定する場合、二者の情報をx、yとすると、x+y或いはxyが意思決定者にとって最適な投資額)を分析した。そして、二者間の(最適な選択についての)利益相反の程度に関わらず、意思決定者からその他利害関係者への情報伝達が、反対方向の情報伝達の質を左右しないことを示した。さらに、より一般的な連続分布・凹関数モデルを用い、この主要結果の一般化の可能性を示した。そして、これまでの研究成果を、研究分担者がEconometric Society World Congress(査読付き国際学会、2020年8月)で発表し、加えて、Games and Economic Behavior(査読付き国際誌)に投稿し審査結果を待っている。
研究2については、大国(プリンシパル)から小国(エージェント)に提案する、小国にとって受入れ可能な(大国にとっての)最適な契約を分析した。特に、小国の行動(協調か否か、その行動を通じての開示情報)、及び、大国の開示情報に応じた金銭の引き渡しに大国はコミットするものの、双方の情報開示は強制できない、そして、大国は自国民への情報公開(観衆費用が発生)するか否かを選択できる、という状況を想定した。結果として、最適な契約において、双方の情報開示を促し小国の協調行動を促すことが可能であること、そして、大国は小国の行動に応じて秘密外交と公開外交を使い分けることを示すことができた。そして、これまでの研究成果を、共同研究者がゲーム理論ワークショップ(査読付き国内研究会、2021年3月)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績概要」に記載の各研究について、今後の推進方策は以下の通りである。
研究1については、上述の通り、査読付き国際誌への掲載を目指し、必要に応じて原稿の改善や投稿を継続する。加えて、これまでは、一人の意思決定者と一人のその他利害関係者が証拠や費用を伴わない情報(ソフト情報)をカジュアルな会話形式(チープトーク)で伝達する状況の分析にとどまっていたので、これを、二人超のプレイヤー間のコミュニケーション、或いは、証拠や費用を伴う情報(ハード情報)の開示のモデルに拡張し、より多様な組織構造の分析に知見を加える。
研究2については、国際交渉の分析に双方向の情報開示や契約理論の枠組みを取り入れるという新たな試みでもあるので、ミクロ経済学理論と国際政治学のそれぞれの専門学会で発表を重ね、専門家からのコメントを収集し、双方の分野での貢献を確認し、その上で、国際専門誌に投稿する。加えて、本研究のトピックに限らず、情報伝達が国際政治に与える影響を広く分析し、最適な組織や制度の設計を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス蔓延により、初年度に予定していた研究代表者・研究分担者の海外出張や国内出張を全て中止し翌年度以降に延期したこと、及び、研究代表者がパソコンの買替を延期したことによる。
新型コロナの収束後は、当初に計画していた通り、研究代表者・研究分担者の海外出張や国内出張(2021年11月予定の UECE Lisbon Meetings in Game Theory and Applications in Portugal, 2021年12月予定のJapan-Taiwan-Hong-Kong Contract Theory Conference in Hong Kong, 2022年1月予定のASSA Meeting in USA, 2021年12月予定のAnnual Communication Theory in Tokyoなどへの参加)を行う。
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Remarks |
研究代表者(千葉)とChien-Yuan Sher他との共同研究"Can a lengthy application title make your application successful? A perspective of information theory."
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Research Products
(5 results)