2020 Fiscal Year Research-status Report
有限回繰り返しゲームへの動学的コミットメントの導入: パレート効率性達成の可否
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20K01551
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
石井 良輔 帝京大学, 経済学部, 准教授 (00581638)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / パレート効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
コミットメント研究の基本的なモデルを最初に発表した Renou (2009) を精読するうちに、Example 1に誤りがあるのを発見した。純粋戦略均衡が存在しない例として出されていたものの、検討したところ純粋戦略均衡が存在したのである。そこで、Example 1をはじめとするRenou (2009) で提示されている例すべての均衡を求めようと試行錯誤を繰り返すうちに、過去の私たちの研究Dutta and Ishii (2016) での設定のように、コミットメントを複数段階行えるコミットメントゲームでの純粋戦略均衡と、Renou (2009) での完全混合戦略均衡との関係に気づいた。 複数回のコミットメント段階がある場合での各段階でのプレイヤーたちのコミットメント行動を、Renou (2009) での1回限りの混合戦略コミットメントの台とすると、Renou (2009) における完全混合戦略均衡を構成し得るのである。単純な3×3ゲームにおいて、第1段階では一方のプレイヤーのみがコミットメントを行い、第2段階ではもう一方のプレイヤーがコミットメントを行う。この第2段階でのコミットメントは、第1段階の結果を確認した後ではじめて最適反応になる、というものである。Renou (2009) の示している「パレート効率性が達成されない例」にも完全混合戦略均衡が存在しており、純粋戦略のときよりもパレート改善になっている。混合戦略均衡について精査することにより、パレートの意味で結果の改善が実現する可能性があるのである。 現状は、間違い訂正と、完全混合戦略均衡が存在するための十分条件について論文にまとめ、2021年秋季日本経済学会の大会に報告申込を行ったところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス禍による遠隔授業の実施その他により、本来計画していた研究に着手できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目では、当初予定の研究はできなかったものの、コミットメント段階の数を増やすことによって、混合戦略均衡を純粋戦略均衡に「読み替える」手法があることに気づけた。また、この読み替えが可能な場合の多くは、混合戦略を考えることで純粋戦略のみの場合よりもパレート改善がなされていることが多いと、現時点では予想している。 このことと、当初予定していた研究との関係の有無に注意しつつ、パレート効率性について直観的な説明が可能なように研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
上記のとおり、コロナ禍で補助金を使用する余裕がなかった。次年度以降に比例配分して、できるだけ早期に、当初計画の進捗状況に追いつきたい。
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