2022 Fiscal Year Research-status Report
有限回繰り返しゲームへの動学的コミットメントの導入: パレート効率性達成の可否
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20K01551
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
石井 良輔 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (00581638)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / パレート効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去2年での研究に引き続き、Renou (2009) を精読し、コミットメントがゲームの結果に及ぼす影響を詳細に検討した。その結果、以下に述べる2点の結果が得られた。 まず、Renou (2009) 型コミットメントゲームに関して、対称ゲームで、一度限りのコミットメント段階で全く同じコミットメント (以下、「公平なコミットメント」) を行う場合、元となるゲームのナッシュ均衡結果以上の利得を全プレイヤーが得る、対称戦略集合の部分集合でのナッシュ均衡が、コミットメントゲーム全体の部分ゲーム完全均衡結果となる。これは、無限回繰り返しゲームの文脈ではフォーク定理に対応する。コミットメントやチープトークなど、事前のコミュニケーション段階を追加しても、一度限りの囚人のジレンマゲームで協調が達成されるモデルは、私の知る限り存在しない。しかしながら、公平なコミットメントでは、相手がコミットしない場合に自分のコミットメントが無効になるという意味で、無限回繰り返しゲームでのトリガー戦略の役割を果たす。この効果により、協調が達成される。 もう1点は、Renou (2009) のコミットメントゲームにおける混合コミットメントのさらなる深掘りである。2年目の研究結果では、混合コミットメントが、コミットメントの多段階化によって「読み替え可能である」可能性が示唆された。これとは別の文脈で、コミットメントを混合することで、純粋コミットメントでは達成できない結果をもたらす可能性を探った。その結果、Renou (2009) の定理2で述べられている「最低保証利得」が、混合コミットメントを考慮すると、純粋コミットメントの場合よりも下がることがあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1年目は新型コロナウイルス禍による遠隔授業の実施その他により、本来計画していた研究に着手できなかった。2年目以降も、感染状況の変化により担当している授業形態の急な変更、担当受講科目の変更などによって1年目の遅れを取り戻すには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年の研究で明らかになったように、コミットメント段階が一度限りのゲームにおいて、混合コミットメント、あるいは公平なコミットメントは、多段階のコミットメントと親和性が高い。これらを精査して、本課題の研究計画である有限回繰り返し囚人のジレンマで、コスト構造、コミット権放棄オプションの有無、コミットメントのルールなどの変更が、ゲームの部分ゲーム完全均衡結果にどういった影響を及ぼすかを網羅的に考察し、解の性質などを直観的に説明したい。
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Causes of Carryover |
前述のように、コロナ禍で補助金を使用する余裕がなかった。できるだけ早期に、当初計画の進捗状況に追いつきたい。
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