2023 Fiscal Year Research-status Report
Strategic foundations of cooperative game theory from the view of anti-duality, and their applications to labor market matching
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20K01552
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
大石 尊之 明治学院大学, 経済学部, 教授 (50439220)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナッシュ遂行 / コア / Shapley値 / 仲介労働市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度に開発した仲介労働市場マッチングモデルでは、政府が失業者をなくすべく民間仲介業者の仲介料レートと公共職業安定所への財政支出を決定する。政府がこのような仲介料レートと財政支出を適切に設定したもとで、修正給与調整プロセスと呼ぶアルゴリズムを各仲介機関が使用することで、仲介労働市場の安定的な均衡を意味する(協力ゲームの解である)コアを達成できることを示した。しかし、コアのような均衡が存在しながら、失業が依然として存在することを示すことには成功していなかった。2023年度はこの問題を以下のように解決した。当初の計画で政府が仲介料レートを相対的に高い水準に設定していた場合、公共職業安定所が低技能労働者と低技術企業をマッチングできるためだけに財政支出を行えばよい。しかし、政府が政策の変更で仲介料レートを相対的に低い水準に変更した場合、もし財政支出を当初の計画から増やすことができないと、高技能労働者たちは潜在的に失業に直面するものの、公共職業安定所は低技能労働者と低技術企業をマッチングして、コアを達成できる。さらに、コア以外の重要な協力ゲームの解であるShapley値のナッシュ遂行についての考察も行った。Oishi and Tajika(2023)では、優加法性を満たす協力ゲームのクラスで限界貢献度ベクトルをもたらすサブゲーム完全遂行メカニズムを提唱している。プレイヤーが一人ずつ加わって全員提携が形成されるような可能性が等確率で起きるとき、各プレイヤーの限界貢献度の期待値が、各プレイヤーのShapley値になる。それゆえ、Oishi and Tajika(2023)のサブゲーム完全遂行メカニズムがShapley値をもたらし、反双対オペレーターで閉じている平衡ゲームは優加法性を満たすので、Shapley値をもたらす反双対メカニズムが存在することになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究実績報告書で示した今後の研究指針方策では、Kelso and Crawford (1982)の労働市場モデルを譲渡可能な効用モデル(TUモデル)に変形できることに着目して、反双対性による仲介労働市場のコアの戦略的基礎付けを行うことになっていたが、労働経済学的に重要な「失業の潜在的発生」を仲介労働市場のコアの理論で説明することを優先し、これを実施した。この結果は、Oishi, Takayuki and Tomioka, Jun and Sakaue, Shin, Stability of Coexistence of Private and Public Job Placement Services in Labor Markets (revised version)としてまとめられ、SSRN(Social Science Research Network)上で公開した。また、オランダのティンバーゲン研究所にて、大石により口頭で発表された。(2023年9月14日) また、コアが非空であるクラスとして知られる平衡ゲームのクラスで、Shapley値がナッシュ遂行できるような反双対メカニズムを作成するための基礎モデルを開発した。以上の結果を含む研究成果は、Oishi, Takayuki and Tajika, Tomoya, An Implementation - Theoretic Analysis of Sharing a River With Positive and Negative Externalitiesとしてまとめられ、SSRN(Social Science Research Network)上で公開した。また、スペインのバルセロナ大学にて、大石により口頭で発表された。(2024年2月23日)
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得た研究成果を総括して、コアやShapley値に関する反双対メカニズムを作成する基礎理論をまとめる。例えば、反双対オペレーターで閉じている平衡ゲームや凸ゲームのクラスでは、戦略形提携ゲームのコアをサブゲーム完全遂行するメカニズムがあるので、この反双対メカニズムもコアを達成できる。凸ゲームは必ずコアの中にShapley値が存在するので、戦略形提携ゲームのコアをサブゲーム完全遂行するメカニズムを改良することで、Shapley値をサブゲーム完全遂行するメカニズムを作成できる可能性がある。これができれば、Shapley値をもたらす反双対メカニズムが作成できる。現在、Min-Hung Tsay 准教授 (Research Center for Humanities and Social Sciences, Academia Sinica )と、この方向性で共同研究を実施している。また、開発した仲介労働市場モデルのコアに関する反双対メカニズムについても検討する。Kelso and Crawford (1982)の着想をヒントにして、開発した市場モデルを譲渡可能性効用の下でサイドペイメントがある協力ゲーム(TUゲーム)として捉え直して、コアに関する修正給与調整プロセスとナッシュ遂行の関係を調べる。この関係を調べることで、TUゲームのコアの反双対メカニズムを調べることができる可能性がある。
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Causes of Carryover |
2023年度は、新型コロナウィルスによる世界的パンデミックが終息し、国際学会や海外研究機関でのセミナーも対面開催で再開されるようになったことから、オランダのティンバーゲン研究所やバルセロナ大学で研究成果を報告した。しかしながら、これまでの研究助成期間の大部分は、新型コロナウィルスによる世界的パンデミックのために、対面での研究交流の機会がほとんどなかった。その結果、海外研究機関での在外研究を目的とした計画当初の海外渡航等ができなくなったために、関連する旅費の使用ができなかったことで、次年度使用額が生じた。2024年度は、いくつかの経済学・ゲーム理論関連の国際学会で、本研究に関連する研究成果を発表することが決まっており、積極的に海外研修等を実施できる見込みである。さらに、研究遂行に必要不可欠な環境整備のために、必要な備品や研究書籍等の購入にも当該助成金を使用したいと考えている。
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