2020 Fiscal Year Research-status Report
望ましい腎臓ドナー交換制度の設計に関する理論・実験研究
Project/Area Number |
20K01555
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
若山 琢磨 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (80448654)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 裕二 (藤中裕二) 関西大学, 経済学部, 准教授 (20552277)
舛田 武仁 信州大学, 学術研究院社会科学系, 講師 (80725060)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | メカニズムデザイン / 経済理論 / ゲーム理論 / マーケットデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)理論分析:本プロジェクトは、偽装結婚・養子縁組などの共謀行為によるドナーの融通を防ぎつつ、より多くの腎移植を実現しうるドナー交換メカニズムを明らかにする。2020年度は、患者間でドナーを交換することに加えて、自分のドナーの提供と引き換えに献腎移植の優先順位を上げてもらうオプションも視野に入れたモデルを考察した。このモデルでは、耐戦略性と効率性を満たす拡張版TTCメカニズムが、共謀行為によるドナーの融通をも抑止しうるという命題を証明していた。しかし、その証明は長大かつ極めて煩雑なものとなっていたため、その証明を改良した。
(2)実験研究:近年、新しい制度を考案・導入する場合には、経済実験による制度の検証が重視されるようになってきている。しかし、ドナー交換メカニズムに関する実験研究の蓄積は乏しい状況にある。本プロジェクトでは、その最初のステップとして、Roth, Sonmez, and Unver (2004)が導入した5つの拡張版TTCメカニズムを対象とし、経済実験によってそれらのパフォーマンスを比較・検討する。5つの拡張版TTCメカニズムのうち、3つについては既に実験を完了していたため、2020年度は残りの2つのメカニズムについて実験実施の計画を立てていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、実験実施を断念せざるをえなかった。そこで2020年度は、現時点で得られている実験データを分析することに軸足を移し、理論的考察パートの執筆やインストラクションの英訳など論文発表の準備を進めた。また、しばらくは対面実験の実施が困難なことが予想されるため、オンライン実験の実施方法を模索した。
(3)本研究課題と関連するメカニズムデザイン研究の論文1本が査読付き国際学術雑誌に公刊され、その他論文1本が掲載受理、論文3本が改訂要求を受けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論分析については、主要命題の証明を改良できたことに加えて、文献調査を進める過程で新たなモデルの着想を得ることができた点で大きな進展があった。経済実験については、2020年度は実験が実施できなかったものの、オンライン実験の準備体制および論文発表の準備を整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論分析については、2020年度に扱ったモデルの分析をさらに推進しつつ、同時移植数に物理的な制約を入れたモデルや患者の選好に自然な仮定を入れたモデルの分析を行う。経済実験については、2020年度に実施を断念した2つの拡張版TTCメカニズムの実験を行い、論文の初稿を完成させる。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大により、実施予定の実験がすべてキャンセルされ、さらに出張費を計上していた学会や研究打ち合わせなどがすべてオンライン実施となったため、次年度使用額が生じた。これらは、実験被験者への謝礼や英文校閲費などに使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)