2021 Fiscal Year Research-status Report
望ましい腎臓ドナー交換制度の設計に関する理論・実験研究
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20K01555
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
若山 琢磨 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (80448654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 裕二 (藤中裕二) 関西大学, 経済学部, 准教授 (20552277)
舛田 武仁 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (80725060)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マーケットデザイン / メカニズムデザイン / ゲーム理論 / 経済理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、対面の実験実施を断念せざるをえなかった。そのため、2021年度は、国際的学術雑誌から修正要求を受けていた論文の改訂作業、および、以下の2つのプロジェクトを柱とした理論分析の推進に力を傾注した。 (1)同時移植数に制限のあるモデル:ドナー交換メカニズムでは、ドナー交換後の移植手術は同時実施が想定されている。その理由は、同時実施でなければ、あるドナーの患者が他のドナーから移植手術を受けた後、そのドナーは手術を拒否するかもしれないためである。しかし、医師数や部屋数などの物理的な制約により、通常、同時移植数には限度がある。そこで、同時移植数を現実的な2組間や3組間などに制限した状況において、「偽装結婚・養子縁組などの共謀行為によるドナーの融通を防止する」という性質(耐保有交換性)を備えたドナー交換メカニズムを明らかにすることを試みた。 (2)事後的なドナー交換を抑止するメカニズム:「耐再配分性」(どのペアも選好の虚偽表明を通じた事後的な財交換によって得をしない)は、事後的なドナー交換の抑止を表現する公理の1つである。TTCメカニズムが耐再配分性とその他の基本的な望ましい性質を満たす唯一のメカニズムであることはFujinaka and Wakayama (2018, Games and Economic Behavior)で既に示していた。しかし、事後的なドナー交換の抑止を公理として表現する方法は他にもある。そこで、そうしたものを公理として精密に表現し、どのようなドナー交換メカニズムがそれらの性質を満たすのかを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経済実験については2年連続で実験が実施できなかったものの、準備は既に完了しており、2022年度には直ちに実験を実施する体制が整備できている。さらに2021年度は、理論分析については以下の通り大きな進展があったほか、本研究課題と関連するメカニズムデザイン研究の論文3本が査読付き国際学術雑誌に掲載受理されたため、おおむね順調に進展していると判断した。 (1)同時移植数に制限のあるモデル:2021年度は、主に2組間の交換に限定した状況を扱った。分析の結果、患者の持ち得る選好に制約がない場合は、耐保有交換性を満たす望ましいメカニズムの構築を諦めなければならないことが判明した。しかし、ドナーの年齢が若ければ若いほど好ましいと患者が考えている状況では、ある一定の条件の下、耐保有交換性を満たす望ましいメカニズムが存在することを示した。 (2)事後的なドナー交換を抑止するメカニズム:耐再配分性の公理を使ったTTCの特徴付け定理については、耐再配分性の公理を「ペア交換性」(どのペアも事後的な財交換だけで得をすることがない)に弱めても成立することが明らかになった。この結果は、患者の持ち得る選好に制約がない状況だけでなく、単谷型の選好を持つ状況でも成り立つことがわかった。さらに、患者が単峰型の選好を持つ状況では、TTCメカニズム以外にも望ましい性質を備えたメカニズムがあることが知られているが、そうしたメカニズムの中で耐再配分性を満たすものが存在するかどうかを調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
理論分析については、2021年度に扱ったモデルの分析をさらに発展させ、論文の完成および国際的学術雑誌への投稿を目指す。経済実験については、2021年度に実施を断念した2つの拡張版TTCメカニズムの実験を行い、2022年度中には論文の初稿を完成させたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症により、実施予定の実験がすべてキャンセルされ、さらに出張費を計上していた学会や研究打ち合わせなどがすべてオンライン実施となったため、次年度使用額が生じた。これらは、実験被験者への謝礼や英文校閲費などに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)