2020 Fiscal Year Research-status Report
Dynamic macroeconomic analysis of innovation in developed countries and technology transfer to developing countries
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20K01561
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
祝迫 達郎 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (40351316)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経済成長 / R&D / 知的財産権保護 / 特許保護 / 技術移転 / 海外直接投資 / 関税 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、民間企業のR&D(研究開発)による生産性成長に基づく経済成長モデルを用いて、知的財産権保護強化やR&D補助金、貿易政策などの政策の効果を分析することである。特に先進国・途上国2国のR&Dに基づく経済成長モデルでこれらの政策の効果を分析することを目的にしている。 2020年度は、研究協力者の田中仁史氏(北海学園大学)とこの先進国・途上国モデルでの関税効果の分析を行った。新しい品質の製品を開発できる先進国と直接投資や違法な模倣によって最新品質を生産できるようになる途上国の動学的な2国モデルを構築し、各国の輸入関税が、先進国のイノベーション、途上国への直接投資、2国の賃金格差、厚生にどのような影響があるかを分析した。 分析の結果、先進国・途上国の関税引き上げは以下のような影響を与えることがわかった。(1)先進国の関税引き上げは、途上国に直接投資を行った場合の利潤を低下させるので、直接投資を減少させる。直接投資の減少は先進国国内にとどまる企業を増加させ、先進国の賃金を上昇させ、先進国のイノベーションを引き下げる。(2)途上国の関税引き上げは、先進国から途上国に輸出する場合の利潤を低下させるので、直接投資を促進する(関税回避的直接投資が起きる)。直接投資の増加は先進国国内の企業を減少増加させ、先進国の賃金を低下させ、先進国のイノベーションを引き上げる。 従来の関連研究では各国の関税引き上げの効果を解析的に分析できておらず重要な結果といえる。この研究成果は“Tariffs and Foreign Direct Investment in a North South Product Cycle Model”というタイトルで論文としてまとめ、大阪大学のDiscussion paperとして2020年5月に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先進国がイノベーションで新しい品質の財を開発し、直接投資によって途上国に生産拠点が移動する南北プロダクトサイクルモデルを構築し、各国それぞれの関税引き上げがどのような影響があるかを解析的に分析することができた。基本的な設定での分析を予定通り遂行することができたので概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
各国の関税引き上げの先進国のイノベーション、途上国への直接投資、南北賃金格差への影響は分析できたので、今後は各国の関税引き上げの誘因を分析するため、各国の厚生効果を分析する必要がある。各国の関税引き上げのそれぞれの厚生への効果は、現段階である程度解析的に分析できているが条件が複雑になる。例えば、先進国の関税引き上げはイノベーション・直接投資を減少させ厚生を低下させる効果と、賃金上昇・関税収入増加によって厚生を改善する効果があり、後者の効果が上回るようなパラメータ条件を求める必要があるが、解析的には複雑で解釈しづらい。今後はどのようなパラメータのとき、先進国が関税引き上げの誘因があるかをとりあえず数値例で分析を行い、分析を進める予定である。 また、解析的に分析するため、直接投資に費用がかからないなど、可能な限り単純な設定で分析を行っていた。これらの設定を一般化した場合にも結果が変わらないか分析する必要もある。これらも解析的に分析が不可能な場合は数値例での分析で対応する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究打合せ、英文校正、研究発表などを行わなかったために、次年度使用額が生じた。来年度以降、論文の拡張分析を行い、大幅改訂を行う予定なので、共同研究者と研究打合せを行い、改訂が完了次第英文校正を行い、研究発表を行う予定である。
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Research Products
(2 results)