2020 Fiscal Year Research-status Report
割引コストのもとで情報構造を最適に決定する主体の理論的分析
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20K01562
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
東 陽一郎 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (80327692)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 主観的状態空間 / 情報収集 / 割引コスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、メニューからアクトを選ぶ前に情報収集を行う主体を公理的に特徴づける。主体の情報収集に対応する行動が観察可能ではなく、メニュー上の選好を考えることで、主体の情報収集の行動を明らかにするという特徴がある。このため、本研究では情報収集は主観的なものである。主体の情報収集において重要なのは、主体がどんな情報収集のコストを持つかである。情報収集のコストは直接観察できないので、主体のもつ情報収集のコストは表現定理により明らかにされる。既存研究では、情報収集のコストが便益から差し引かれる加法モデルが公理的に特徴づけられている。しかし、情報収集に時間がかかる場合、コストは便益に対する割引として表現される方がもっともらしい場合もある。 本研究では、情報収集が割引コストである主体を公理的に特徴づけている。これに加えて、本年度の研究では、情報収集が加法的な場合と割引コストになる場合を含む一般モデルを特徴づけた。一般モデルを公理的に特徴づけることで、コストが加法モデルに対応する行動や、割引モデルに対応する行動が明らかになる。つまり、既存研究で明らかになった公理のうち、どの公理がコストの構造に対応し、どの公理が主観的な情報収集に対応するかが明らかになる。本年度の研究は、主観的に情報収集を行うとみなせる主体の行動を明らかにしたことであると考えられる。 本年度は、主観的な情報収集のコストとして加法モデルと割引モデルを含む一般モデルを特徴づけ、その結果をディスカッションペーパーとしてまとめた。これに加えて、主観的不確実性を持つ主体が信念をベイズ改訂するモデルを論文としてまとめ、ディスカッションペーパーとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、情報収集のコストが割引型である場合とコストが加法型の場合を含む、一般的なモデルを公理的に特徴づけ、結果をディスカッションペーパーにまとめた。この一般的な情報収集コストのモデルの公理的特徴づけは、技術的に困難な点が多かったが、結果を得ることができたので、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、情報収集のコストが割引型である場合とコストが加法型の場合を含むモデルを公理的に特徴づけた。この公理的な特徴づけでは、アクトに対する選好が主観的期待効用モデルに従う。エルスバーグ・パラドックスが示すように、意思決定主体は必ずしも主観的確率をもとに行動しているわけではない。今後は、主観的な情報収集を行う主体が必ずしも主観確率をもたない場合を分析する予定である。これに加えて、本年度得た結果の特殊ケースを考えることも予定している。これは、応用の論文ではコストを特定の関数として書くことが多く、特定の関数形を仮定することの意味が行動として明らかになることに意義があると考えられるからである。
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Causes of Carryover |
本年度は、コロナウィルスのため、活動が制限された。研究打ち合わせや研究発表を予定していたが、それらを取りやめた。このため、次年度に使用する研究費が発生した。研究費は次年度のコロナウィルスの状況に応じて、研究打ち合わせ、研究発表、研究遂行のための書籍や機器の購入、英語論文の英文校正などに使用する予定である。
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