2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01564
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
宮城島 要 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (90587867)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 公平性 / 時間整合性 / 効率性 / 社会厚生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、人々の割引因子が異なる動学モデルを用いて、公平性、効率性、時間整合性を満たす社会厚生指標の構築を行った。まず、公平性として過去の状況を考慮せずに再分配を行う条件、効率性として人々の人生効用が上昇することを社会的改善とみなすパレート原理、異時点間で意思決定の齟齬が生じないことを要請する時間整合性の3つの条件を満たす社会厚生関数は不可能であるという結果が得られている。再分配に際して過去を考慮しないというのは、例えば事情があって年金保険料を払わずに年金受給資格がなかった人が陥った場合、最低限の生活水準を満たすような補償をするような状況を考えている。 上記の不可能性を受けて、過去の状況を考えずに再分配を行う公平性と、過去に不平等がない状況であれば時間整合性を要請した。パレート原理とこれらの条件によって、ある種のマキシミン社会厚生関数の特徴づけを行った。このマキシミン社会厚生関数は、過去を考慮せず、現時点からの平均人生効用のうち最も恵まれない人の値を基準として社会的意思決定を行う。 もう1つの分析として、過去に不平等がない状況で再分配を行う公平性と、時間整合性を満たす基準を検討した。パレート原理とこれらの条件によって、もう1つ別のマキシミン社会厚生関数の公理化を行った。このマキシミン社会厚生関数は、過去を考慮せず、現時点からの平均人生効用のうち最も恵まれない人の値を基準として社会的意思決定を行う。 これらの研究を英語論文にまとめ、改訂を重ねている。また、国際査読誌への投稿も行なっている。 また、動学的整合性と事後的公平性の2条件と両立するようなパレート原理を考え、マキシミン社会厚生関数を導出した。この成果はEconomic Theory誌に掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、上記の成果報告に書いた通り、時間整合性と公平性を両立させるような形にそれぞれ修正し、それぞれの場合においてマキシミン社会厚生関数を導出した。この研究はほぼ計画通りに進んでいる。 また、効用関数と割引因子が異質で個人間比較不可能な場合を考え、パレート原理と公平性と時間整合性を満たす社会厚生基準を研究している。過去を考慮せず消費の不平等を緩和するピグー・ドールトン移転原理、時間整合性、パレート原理の3つの条件が、人々の人生効用関数が等しい場合でさえ両立不可能であることを示した。その上で、過去に不平等がない場合において、人々の人生効用関数が等しい場合にのみピグー・ドールトン原理を適用した。これによって、自分の消費流列と同等の平均人生効用をもたらす消費水準を基準とした個人間比較によるマキシミン社会厚生関数を導出した。 なお、コロナ禍のため、予定していた学会参加などは不可能だった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、効用関数と割引因子が異質で個人間比較不可能な場合において、社会的に最適な消費配分について検討する。また、これらの成果を英語論文としてまとめ、他の研究者のコメントをもとに改訂をしつつ、国際査読誌に投稿する。 また、人々が将来の効用について準双曲割引となるモデルを考える。この設定では、人々の動学的判断が時間的非整合性を引き起こす可能性がある。そのような判断を尊重することを要請するパレート原理を満たすことがそれほど望ましいとは思われない。今後の研究では、人々の判断が時間非整合的でも、社会的判断として時間整合的かつ公平性と効率性を尊重するような基準を検討したい。パレート基準を弱めた上で、選好の異なる個人間にも適用できるようなより強い公平性基準を要請することが、1つの方向性として考えられる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、当該年度において出張費を使用できなかった。2021年度は、コロナ禍などの国際状況が改善して、可能であれば海外出張などで使用する。また、国際学術誌への投稿料や、書籍や論文の購入にも使用する。
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Research Products
(1 results)