2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K01568
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
茂見 岳志 同志社大学, 経済学部, 教授 (40367967)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会的選択関数 / 交換経済 / 耐戦略性 / パレート最適性 / 偏微分方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文 Locally efficient and strategy-proof allocation mechanisms in exchange economies(投稿中)で、消費者の選好を任意の選好の近傍に局所的に限定した場合の財配分メカニズムを分析し、そのように限定した場合であっても、財の数が消費者数より多い場合には、パレート最適かつ耐戦略的な財配分メカニズムは独裁的(誰かがすべての財を受け取るが受け取り手は変化しうるという、いわゆる代替的独裁)なものしかないことを示した。同様の結果はこれまでの研究では大域的に得られており、当論文はそれを強化するものである。 一方、当研究課題の主目的は選好の「タイプ」を限定した場合の財配分メカニズムを偏微分方程式を用いて分析することである。こちらについては、研究開始以来、最適かつ耐戦略的で、「独裁的でない」配分メカニズム、すなわち、複数の消費者が財を分け合うような配分メカニズムが局所的には存在するという既存研究を転換する予想を持って研究を進めてきたが、今年度の研究の結果、その様に限定したとしても、最適・耐戦略的・非独裁的な配分メカニズムは存在しないという逆の予想、つまり既存研究を支持する予想を持つに至った。 具体的には以下の結果を得た。コブダグラス型の選好を持つ3人の消費者からなる経済において、配分メカニズムはそれらの選好を定めるパラメータ空間を定義域とする関数となるが、解析的な関数で、最適かつ耐戦略的なものは独裁的なものしかない。つまり、解析的な関数で表現できるものに限れば、そのような経済で最適かつ耐戦略的な財配分メカニズムは独裁である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に記したように、当初予想していた結果が得られそうにないことは残念であるが、最終目的は、消費者の選好タイプを限定した場合の配分メカニズムの特性を明らかにすること、すなわち、そのような状況下で、最適かつ耐戦略性を満たす配分メカニズムで独裁的でないものが存在するかしないか、である。その意味では、後者であろうという予想を得たことは前進といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
消費者のタイプを限定するとともに、配分メカニズムの微分可能性を仮定することにより、最適性・耐戦略性・非独裁制といった性質を満たす配分メカニズムの存在を偏微分方程式系の解存在に帰着して考えようとすることが当研究の道筋であった。そのように定式化できることはわかっていたが、その偏微分方程式系が解をもつかどうかが難しい問題である。今年度得た結果は、解析的なものに限れば解は存在しないということである。 解析的であることは、微分可能性よりも少なからず強い仮定であるし、より重要な点として、配分メカニズムが解析的でなければならない経済学的な理由は考えにくい。(配分メカニズムの微分可能性も経済学的意味を見出すことは難しいかもしれないが、これは偏微分方程式を用いて記述する以上最低限必要な制約であると考える。)その意味で、現在の結果は経済学的に意味のある結果とは言い難く、さらに分析を進める必要がある。すなわち、微分可能なものまで配分メカニズムの範囲を広げたとしても、同様の結果が得られるのかどうかを追求したい。
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Causes of Carryover |
研究が数学的な思考の段階にあり、当初想定していたコンピュータを用いた分析や、学会発表等のための旅費等を使用する段階に達していないため、予定していたように支出が進んでいない。次年度以降に、研究が進み、それらの使用が行えるようにしたい。
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