2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K01568
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
茂見 岳志 同志社大学, 経済学部, 教授 (40367967)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会的選択関数 / 交換経済 / 最適性 / 耐戦略性 / 偏微分方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は残念ながら研究が進展していない。研究の主題は多人数の経済において、消費者の選好に応じて配分を決めるメカニズムを考えたときに、最適性、耐戦略性、非独裁性という望ましい性質を満たすものがあるかどうかを明らかにすることである。そのアプローチとしてメカニズムと選好を表現する効用関数に微分可能性(あるいは解析性)を仮定することで、問題を連立偏微分方程式系により表現することが可能であり、最適性、耐戦略性、非独裁制をみたすメカニズムの存在のを連立偏微分方程式系の解存在に帰着させることができる。
当初このようなアプローチにより、局所的には最適、耐戦略的、非独裁的なメカニズムの存在が示せると予想していた。(具体的にはコーシー=コワレフスキーの定理ないし、カルタン=ケーラーの定理が適用できると予想していた。)前年度に、それは誤りであり、そのようなメカニズムは存在しないという予想へと転換するに至った。以来、その予想を証明すべく奮闘しているが、残念ながらいまだ確定的な結果を得られずにいる。問題は、連立偏微分方程式系の解の非存在(あるいは存在)を確定したいのだが、当初予想したような解存在の定理が適用できるものではなく、かといって、簡単に非存在を言えるものでもない。当該のモデルに特化して、解の非存在(あるいは存在)を証明することが必要であり、そのためにさらなる研究の進展が必要であるが、そこに至れていないのが現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述したように、苦戦している。問題は、連立偏微分方程式系の解の非存在を証明することである。解(求める関数)の数に比して、それらが満たすべき方程式の方が多く、解の非存在を予想しているが、証明できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
第1は現在の連立偏微分方程式系の問題に取り組むことである。数学の問題としては明確であり、一層に注力して取り組みたいと考えている。
第2に、これだけ時間をかけて解決できないことを踏まえると、別の手法によることも必要かもしれない。冒頭に記したように、経済学の問題として、最終的に明らかにされるべきは、最適性、耐戦略性、非独裁制をみたす配分メカニズムの存在・非存在を、限られた選好、例えばコブダグラス型効用関数で記述される選好の下で明らかにすることである。その意味では、偏微分方程式の利用に拘泥する必要はない。しかしながら、偏微分方程式を用いた問題記述が本研究課題のテーマであるから、その方向で解決に至りたいと考えている。
第3に、消費者が2人の場合などは、偏微分方程式を用いた記述により、最適性、耐戦略性、非独裁制をみたす配分メカニズムが存在しないことを簡潔に証明できる。また多人数であっても、特殊な効用関数の場合は同様に、簡潔に分析できる。これらの内容は区切りとして整理したい。しかしながら、特に2人経済の場合は、すでに十分に研究されており、そのようなメカニズムの非存在はすでによく知られた事実であり、偏微分方程式を用いることに、証明が簡潔になるという以上の意義はない。
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Causes of Carryover |
数学的問題の解決ができない状況にあり、研究費を使用する段階に至っていない。すなわち、学会発表、論文投稿などに関係する経費を使用する段階に至っていない。 その問題を解決し、論文を完成させたのちに、学会参加のための渡航費を使用したい。また、数値解析的手法をもちいてモデルの解析に取り組むということも当初予定であったが、これも現行の問題解決の後の課題であり、解決後にそのための計算機関連の予算を使用したい。
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