2021 Fiscal Year Research-status Report
Population Aging and Economic Growth
Project/Area Number |
20K01569
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田畑 顕 関西学院大学, 経済学部, 教授 (20362634)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 再分配政策 / 研究開発投資 / 国際貿易 / 労働組合 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、「プロダクト・イノベーション(新製品の開発投資)」と「プロセス・イノベーション(既存製品の品質改善投資)」の両方を考慮したR&D型経済成長モデルを用いて、再分配政策が、経済成長率と所得不平等に及ぼす影響について理論的に分析を行った。その結果、(1)企業数が調整過程にある短期では、再分配政策は所得不平等を改善するが、経済成長率に及ぼす影響は正、負どちらの場合もあり得ること、(2)企業数が完全に調整される長期では、再分配政策は所得不平等を改善しつつ、経済成長率に正の影響を及ぼすこと、をそれぞれ明らかにした。この成果は "Redistributive Policy and R&D-based Growth" (School of Economics, Kwansei Gakuin University, Discussion Paper Series No.227)としてまとめた。 第2に、2国開放R&D型経済成長モデルを用いて、労働組合が企業の立地選択を通じ、経済成長率に及ぼす影響について理論的に分析を行った。その結果、(1)小国での労働組合の交渉力の低下は、技術知識の国際間での伝播を悪化させ、経済成長率に負の影響を与えること、(2)大国での労働組合の交渉力の低下は、技術知識の国際間での伝播を改善し、経済成長率に正の影響を与えること、をそれぞれ明らかにした。この成果は "Unionization, Industry Concentration, and Economic Growth" (Institute of Social and Economic Research, Osaka University, ISER Discussion Paper No.1154)としてまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究実施計画では人口の高齢化が「プロダクト・イノベーション(新製品の開発投資)」と「プロセス・イノベーション(既存製品の品質改善投資)」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルを構築すること、およびその理論結果の妥当性について数量的に検証すること、を本年度中に達成すべき課題として挙げていた。しかし、「プロダクト・イノベーション(新製品の開発投資)」と「プロセス・イノベーション(既存製品の品質改善投資)」の両方を考慮したR&D型経済成長モデルの解析的な取り扱いが難しいこともあり、この枠組みを用いて、人口の高齢化が経済成長率に及ぼす影響に関して、興味深い理論的含意を導くことはできなかった。しかし一方で、同じ枠組みを利用することで、再分配政策が経済成長率に及ぼす影響に関して、興味深い理論的含意を導くことには成功し、この成果をDiscussion paperとしてまとめた。 以上、当初の実施計画とは異なるものの、「再分配政策」と「経済成長」の関係という重要な学術的な「問い」に答えるために有用な経済成長モデルの構築には成功しており、その点については評価できると考えている。しかし当初計画した人口の高齢化が「プロダクト・イノベーション(新製品の開発投資)」と「プロセス・イノベーション(既存製品の品質改善投資)」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築には成功しておらず、さらなる検討の余地が残る。その意味では、現在までの達成度は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は当初の予定通り、(1)人口の高齢化が「企業が行う技術開発の方向性」への影響を通じ、自国や外国の長期的な経済成長、経済厚生に与える影響を分析する経済成長モデルの構築、(2)(1)の理論モデルから得られる結果の妥当性についての数量的検証、といった作業に取り組んでいく。具体的には人口の高齢化の度合いによる労働力人口比率の国家間での差異が「企業が行う技術開発の方向性」に影響を与えるようなR&D型経済成長モデルを構築し、人口の高齢化が経済成長率に及ぼす影響について分析を行う。 加えて、令和2年度に成果をまとめることができなかった、人口の高齢化が「家計の教育選択」と「企業の研究開発投資」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築にも引き続き取り組んでいく。 また、こうした理論分析に基づく数値シミュレーション分析や実証研究のために必要なデータベースの作成などにも取り組む。以上、令和4年度はできうる範囲で、当初の研究計画に沿って研究を進めていく。
|
Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウイルスの影響で、学会や研究会で研究成果報告をする機会が計画より減ったため、外国旅費や国内旅費の一部を翌年度に繰り越すこととなった。 (使用計画) 翌年度に持ち越すことになった238,286円については国内旅費と英文校正費に割り当てる。
|
Research Products
(3 results)