2022 Fiscal Year Research-status Report
Population Aging and Economic Growth
Project/Area Number |
20K01569
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田畑 顕 関西学院大学, 経済学部, 教授 (20362634)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 金融仲介機関 / 研究開発投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
Rivera-Batiz and Romer (1991) により提示されたLab-equipmentタイプのR&D型経済成長モデルに、Sunaga (2017)の定式化に基づく金融仲介機関を導入し、金融仲介機関の情報収集・生産の効率性と社会厚生を最大化する特許保護水準の関係について分析を行った。そして、金融仲介機関の情報収集・生産の効率性が向上するほど、社会厚生を最大化する特許保護水準も上昇するという理論結果を得た。この理論結果は、仮に各国の政府が社会厚生を最大化するような特許保護政策を実施しているのであれば、金融仲介機関の情報収集・生産の効率性が高い国ほど、より高い特許保護水準を実現する法律の制定や運用を行う傾向にあることを示唆する。 こうした理論結果の現実妥当性を確認するために、本研究では1998年から2017年の50ヵ国のパネルデータを用いて簡単な実証分析も試みた。具体的にはPapageorgiadis et al (2020)により開発された特許関連の法律の内容とその運用状況の情報を織り込んだパテント保護水準の程度を表す指標を被説明変数として用い、1人当たりGDPや金融機関の効率性などの指標を説明変数として採用して、固定効果パネルデータ分析を行った。その結果、金融機関の効率性の指標の改善幅が大きい国ほど、パテント保護水準の改善幅も大きくなる傾向が観察された。ただし、現時点では、初歩的な実証分析にとどまっており、結果の解釈には注意が必要である。今後、データセットの拡充と、分析手法の精緻化を通じ、実証結果の頑健性について、さらなる検討を重ねていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の推進方策の計画では、人口の高齢化が「企業が行う技術開発の方向性」への影響を通じ、自国や外国の長期的な経済成長に与える影響を分析する経済成長モデルを構築すること、およびその理論結果の妥当性について数量的に検証をすること、を本年度中達成すべき課題として挙げていた。しかし、2国開放経済の枠組みで「企業が行う技術開発の方向性」について明示的に考慮することが、想定以上に、技術的に難しかったこともあり、人口の高齢化と「企業が行う技術開発の方向性」の関係について、興味深い理論的含意を導くことはできなかった。 しかし一方で、Lab-equipmentタイプのR&D型経済成長モデルを利用することで、金融仲介機関の情報収集・生産の効率性と社会厚生を最大化する特許保護水準の関係に関して、興味深い理論的含意を導くことには成功した。以上、当初の計画とは異なるものの、金融仲介機関の情報収集・生産の効率性と特許保護水準の関係という重要な学術的な「問い」に答えるために有用な経済成長モデルの構築には成功しており、その点については評価できると考えている。しかし、研究の推進方策の計画で、提示した人口の高齢化が「企業が行う技術開発の方向性」への影響を通じ、自国や外国の長期的な経済成長に与える影響を分析する経済成長モデルの構築には成功しておらず、さらなる検討の余地が残る。その意味では、現在までの達成度は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は当初の予定通りに、(1)人口の高齢化が「需要構造の変化」と「セクター別の生産効率改善投資の難易度の違い」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築、(2)(1)の理論モデルから得られる結果の妥当性についての数量的検証、といった作業に取り組んでいく。具体的には人口の高齢化よる品質改善が難しいサービス業への相対的な需要の拡大が、プロセス・イノベーションを通じ、経済成長に与える影響について分析を行う。令和3年度に成果をまとめることができなかった、人口の高齢化が「プロダクト・イノベーション(新製品の開発投資)」と「プロセス・イノベーション(既存製品の品質改善投資)」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築にも引き続き取り組んでいく。また、こうした理論分析に基づく数値シミュレーション分析や実証研究のために必要なデータベースの作成などにも取り組む。以上、令和5年度もできうる範囲で、当初の研究計画に沿って研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウイルスの影響もあり、学会や研究会で研究成果報告をする機会が計画より減ったため、外国旅費や国内旅費の一部を次年度に繰り越すこととなった。 (使用計画) 翌年度に持ち越すことになった247,381円については国内旅費と英文校正費に割り当てる。
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