2021 Fiscal Year Research-status Report
Walras on Risk, Uncertainity and Entrepreneur: the General Equiibrium Theory from a Historical Perspective
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20K01575
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
御崎 加代子 滋賀大学, 経済学部, 教授 (90242362)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ワルラス / 一般均衡理論 / 企業者 / リスク / 不確実性 / 利潤 / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ワルラスの一般均衡理論は、無時間的調整の仮定により、リスクや不確実性考察は排除されていると一般的に考えられている。ワルラス自身、企業者の存在さえも捨象可能という想定をしていた。これらの非現実的仮定は、ワルラス・モデルの致命的な理論的欠陥とみなされており、20世紀の理論経済学者たちは、それをより現実的な実証モデルに修正・発展させることに取り組んだ。本研究の目的は、これまで考察されなかった、ワルラス一般均衡理論の企業者にかかわる非現実的仮定の意図と背景を、思想史的なアプローチにより明らかにすることである。 本年度の計画は当初、初年度に行った文献研究等の基礎的な作業を出発点に、研究論文を1本を完成し、国際学会で報告し、国際査読ジャーナルに投稿することであった。欧米での国際学会の開催は徐々に正常に戻りつつあったが、日本の水際政策が厳しく、帰国時の隔離政策等を考慮して、計画していた学会報告のための外国出張は断念した。 6月には、国際査読ジャーナル The European Journal of the History of Economic Thought に本プロジェクトに関連する研究論文が紙媒体で公刊された(オンラインでは2020年9月に公開済)。この論文は、ワルラス一般均衡理論の形成過程におけるスミス『国富論』の影響を考察するもので、主に2019年度まで取り組んでいた科研費のプロジェクトの成果ではあるが、その結論には、本研究プロジェクトと関係する重要な論点が含まれている。 12月には、日本ベンチャー学会で、シュンペーターの企業者・イノベーション概念の歴史的・思想的背景について、招待講演を行った。この講演は、ワルラスからシュンペーターへの影響関係を軸とした、企業者と不確実性についての経済学史的な考察であり、本研究プロジェクトの成果の一部である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献の収集とサーヴェイ、論文の執筆等、国内で行うべき作業はすべて順調に進んでいるが、国際学会における研究発表がまだ全く実施できていない。国内の新型コロナウィルスの感染防止政策が原因である。欧米において国際学会の実施は徐々に正常化しているが、日本の水際政策は非常に厳しく、帰国時の隔離等で、大学での業務に大きな支障が出るため、外国出張を断念せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と2年度の基本的な作業により、ほぼ完成した論文は2本ある。今年度は、そのうちの1本を国際学会で報告して、国際査読ジャーナルへの投稿の準備をする。もう一本も海外のセミナー等で報告し、修正発展させたうえで国際査読ジャーナルに投稿する。それ以外にも、論文に発展させるべきアイデアを得ているので、それらの論文の執筆をすすめる。また前年度の日本ベンチャー学会の招待講演を発展させた論文を執筆し、某国内査読ジャーナルに寄稿する。これは招待論文として、年内に掲載される予定である。 一方、今年度は当初の計画では、滋賀大学において第11回国際ワルラス学会(AIW)を開催することになっていた。本研究計画のテーマを学会テーマとして定めて、参加者を広く世界から募り、活発な議論の場を設けるため、学会の会場費を予算として計上していた。しかしながら新型コロナウィルス感染防止のための日本の現在の入国政策を考慮すると、今年度の学会の実施は不可能と判断した。この予算は来年度に繰り越し、実施の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染対策のために実施されている、渡航制限勧告や帰国時の隔離政策を考慮し、国際学会参加のための外国出張をすべて断念したため、旅費として計上した予算を全く使用していない。今年度は、これまでの遅れを取り戻すため、可能な限り外国出張を実施し、国際学会やセミナーでの研究成果を進める。
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