2022 Fiscal Year Research-status Report
アダム・スミスの大きな政府論の形成過程に関する研究
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20K01576
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
新村 聡 岡山大学, 社会文化科学研究科, 特命教授 (00167561)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アダム・スミス / 労働者 / 高賃金 / 分業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、スミスが労働者階級の生活状態を改善するためにどのような提案を行ったかについて考察した。スミスが、労働者階級の生活状態を悪化させている主原因として批判したのは重商主義の政策と商業社会の悪影響の2問題であり、それぞれを検討する。 スミスは重商主義の政策を2点で批判している。第1にスミスは重商主義が推進した保護貿易を批判して自由貿易を主張した。第2にスミスは重商主義が促進した低賃金・長時間労働を批判して高賃金と適正な労働時間の実現を主張した。重商主義の低賃金論の主要な論拠は、高賃金が怠惰をもたらすことと、生産費を引き上げて輸出を減らすことであった。この重商主義の低賃金論に対して、スミスは高賃金が勤勉を促進し、労働生産力を高めて国際競争力を強化すると主張した。 スミスは商業社会の悪影響として、分業による単純労働への特化が労働者の知的・社会的・軍事的能力を衰退させることを批判した。この商業社会の悪影響に対するスミスの提案は、分業の廃止ではなく分業を維持しつつ弊害をできるだけ除去することであった。スミスは次のような初等教育制度を提案している。政府が小学校を設立し、教師の給与を支給し、普通の労働者でも支払える安い謝礼で教育を受けられるようにする。さらにスミスは、小学校で「読み、書き、計算」だけでなく「幾何学と機械学の初歩」を教育することを提案した。かれは労働者が生産現場において道具や機械を改良するイノベーションの主体となることを期待したのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題をほぼ順調に達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
アダム・スミスの政府論が『法学講義』から『国富論』へどのように発展したかについて、公共事業・公共制度論と租税制度論を中心に考察する。
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Causes of Carryover |
コロナ流行のために学会と研究会へオンラインで参加したので、出張費が残った。 次年度の出張費に追加して支出する予定である。
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Research Products
(2 results)