2021 Fiscal Year Research-status Report
SUT体系における商業サービスの表章および推計手法に関する調査研究
Project/Area Number |
20K01596
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
宮川 幸三 立正大学, 経済学部, 教授 (00317281)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 供給・使用表(SUT) / 商業サービス / デジタルエコノミー / 経済センサス活動調査 / 産業連関表 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、供給・使用表(SUT)における商業サービスの適切な表章形式や推計手法について、産業分類および生産物分類や一次統計における調査単位の視点から検討することである。またその検討結果に基づいて、SUTおよび産業連関表を試算し、流通経路の複雑化や多様化、商業活動のデジタル化といった様々な変化がマクロ経済に及ぼした影響について分析を行うことも本研究の目的である。 本研究の内容は、「①諸外国のSUTにおける部門概念や推計手法に関する調査」、「②商業サービスの表章形式の在り方に関する実証分析」、「③商業分析用SUTの試算とマクロ経済への影響に関する分析」という3つのパートからなっている。 2021年度は、①として、北米地域の産業分類体系および生産物分類体系の最新版である「2022NAICS」および「2022NAPCS」について調査した。また日本標準産業分類や2021年5月に決定された日本の新たな生産物分類との比較分析を行い、日本の商業活動の分類体系における課題を明らかにした。 ②としては、「経済センサス-活動調査」の個票データを用いて事業所別の付加価値率に関する分析を行い、現行の商業部門の産業分類において統合を検討すべき部門や分割が必要な部門などを示した。これらの成果については、統計関連の学術誌に論文を投稿する予定である。 さらに③に関連して、2021年度から開始していた商業分析用産業連関分析モデルの構築を進め、分析事例としてデジタル・エコノミーの視点からインターネット小売業を別掲した産業連関表を試算するとともに、2011年から2015年にかけての変化について分析を行った。結果として2015年時点のインターネット小売業の生産額規模は約1.6兆円であったこと、2011年と比較すれば大きく増加しており、特に飲食料品小売業の影響が大きかったことなどを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響により、前年度に続き2021年度前半は学生アルバイトを雇うことができず、アルバイトを開始したのが11月以降だったため、資料やデータの整理に関する作業はやや遅れている。 また「経済センサス-活動調査」の個票データを扱うために高性能のPCを購入することを予定していたが、半導体不足の影響もあり予定していた商品を購入することができなかった。これによりデータ分析にも多少の遅れが生じているものの、既にデータの入手や使用のための準備作業は進めており、またPCを購入できる目途も立っているため、2022年度以降は計画通りに研究を進めることができる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
「①諸外国のSUTにおける部門概念や推計手法に関する調査」に関しては、現在、国際標準産業分類(ISIC)の改定に向けた議論が行われていることから、その動向を注視しつつ日本の商業部門の分類体系のあり方について考察を進める予定である。 「②商業サービスの表章形式の在り方に関する実証分析」に関しては、「経済センサス-活動調査」の個票データから、実際にSUTや産業連関表の推計を行うシミュレーション分析などを実施し、現状の一次統計のもとで精度の高いSUT・産業連関表を推計する方法を検討する。 「③商業分析用SUTの試算とマクロ経済への影響に関する分析」については、これまでに作成した商業分析用産業連関分析モデルに基づき、試算の対象を小売だけでなく卸売の電子商取引にも広げるとともに、マージン率の違いに加えて生産技術の違いも考慮するといった拡張を行い、商業活動の多様化や複雑化、デジタル化が経済全体に及ぼした影響について分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」欄にも書いたように、新型コロナウィルスの影響により年度前半に学生アルバイトを雇うことができなかったため、その分の人件費が次年度使用額に含まれている。 また、購入予定であったPCを購入することができなかったため、その分の物品費も次年度使用額として繰り越されている。 2022年度には、前年度までの遅れを取り戻すようアルバイトを雇用するとともに、できるだけ早い時期にPCを購入する計画であり、次年度使用額はそのために支出する予定である。
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