2020 Fiscal Year Research-status Report
形状制約を用いたノンパラメトリック、セミパラメトリック推定の理論と応用
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20K01598
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
荒井 洋一 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (50376571)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ノンパラメトリック / セミパラメトリック / 形状制約 |
Outline of Annual Research Achievements |
基本的なモデルとして、説明変数が一つの単回帰において、未知の不均一分散が存在するモデルにおける係数推定量、推定量の漸近理論の導出を行なった。そこでは、不均一分散は説明変数の未知の関数であるが説明変数に関しては単調であることを仮定した。なお、消費関数など多くの例がこの単調性の仮定を満たすと考えられる。係数推定のために3段階の推定方法を提案した。第1段階目においてはまず回帰式を最小二乗法により推定し残差をもとめる。そして第2段階目で不均一分散の未知関数を推定する。そのために残差の2乗を説明変数に回帰するisotonic regressionを用いることにより、単調性の仮定の下で不均一分散の関数を推定する。そして第3段階目で不均一分散の関数推定値を用いて係数の一般化最小二乗推定(GLS)を行う。 次に、以上のように求められた推定量の漸近的性質を導出した。非常に一般的な仮定の下で経験過程理論を用いることにより、提案された推定量は不均一分散の関数形が既知の場合の推定量と同一の漸近分布を持つことが示された。この推定量の重要な性質は、不均一分散の関数のノンパラメトリック推定においてバンド幅のようなスムージングパラメータに依存しないことである。また、不均一分散の関数推定量が非連続であるため漸近理論の導出が非常に複雑になることである。 提案された推定量の小標本における性質を調べるために、既存の文献における代表的なDGPを考えてモンテカルロ実験を行なった。そこでは、小標本において良好な性質をもつことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、海外の研究協力者との議論が予定よりは困難であったが、Zoomなどを利用しておおむね予定通りの進展となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定としては、ここまで考えた単回帰で未知の不均一分散が存在する場合を一般的な状況へ拡張することを考える。重要な拡張は、説明変数が複数存在する多重回帰への拡張である。この場合は不均一分散が複数の説明変数の未知の関数となるので単調性の概念が複雑になり、推定量も自然な拡張が難しい。そこで、これまでの結果を自然な形で拡張できるような2種類のモデルを検討する。 まず、一つ目のモデルにおいては不均一分散がシングルインデックスモデルに従うことを仮定する。シングルインデックスモデルでは分散が説明変数の線型結合に依存するが、説明変数の線型結合は1次元となるのでこれまでの単回帰の理論的結果を踏まえた上で理論を展開できると考える。 次に、二つ目のモデルにおいては不均一分散が、説明変数に関してadditively separableな関数形を持つことを仮定する。Additively separableなモデルとは、分散が説明変数一つ一つの非線形変換の和となっていることを仮定するモデルである。それぞれの関数形は未知であるが、一つ一つの非線形変換ははただ一つの説明変数にのみ依存するのでこの場合においても単回帰の場合の理論的な結果を自然な形で拡張できることを考える。 以上の理論的な議論を踏まえて小標本での性質をモンテカルロ実験において検証する。特に興味があるのは、真のモデルが上で考えた二つのモデルに含まれない場合にどのような性質を持つのかということである。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、研究協力者が海外にいるため旅費が重要な予算であった。しかし、コロナ禍においては海外出張ができず次年度使用額が発生した。これらの予算は今後海外出張が可能になった場合に集中的に使用される予定である。
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