2021 Fiscal Year Research-status Report
都市集積における地域文化と労働力の多様性の持続可能性:空間経済学的分析
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20K01616
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
猪原 龍介 亜細亜大学, 経済学部, 准教授 (20404808)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テレワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今に見られるテレワークの普及は、地域構造や人の移動に少なからぬ影響を与える。そのことを念頭に、当該年度は空間経済学の2地域モデルに地域間通勤費用を導入したモデルを構築することに注力した。当研究では、空間経済学の2地域モデルに地域間通勤費用を導入したモデルを提示する。人口が地域間に均等に分布する分散構造においては、労働者は就業地外に居住するインセンティブを持たないので、モデルの結論はHelpman型モデルと変わらない。一方、核ー周辺構造においては、周辺地域の地価が下がるため、雇用の集中する就業地外に労働者の一部が居住する場合がある。そのとき、通勤費用は上昇するが、就業地での地価の上昇は抑えられることになる。テレワークの普及により通勤の費用負担が低下すると、居住地の分散化が進むと同時に、地価の下落は企業立地を都心へ集中させることになると考えられる。続いて、以上のモデルを日本の各都市雇用圏に当てはめる。都市圏人口100万人以上の都市雇用圏の中から、中心都市規模が郊外都市人口を上回るだけ都市圏を抽出して、核ー周辺構造の2地域モデルに当てはめる。その上で、現実の人口分布を説明しうる通勤費用と製品輸送費を算出して、テレワークの導入が進み通勤費用が低下したケースを想定して、都市圏内の労働分布にどのような変化があるかをシミュレーションにより求めた。以上の分析結果を論文にまとめ、応用地域学会の年次大会(金沢大学、オンライン)で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は地域文化の創生に関するものであるが、コロナ禍を受けてのテレワークの普及は、就業形態やそれを反映した地域構造に無視できない影響を与えるものと考える。実際に、最近まで続いていた東京への一極集中傾向は一服し、郊外や地方への人の流れが目立つようになってきている。よって、当該年度は基礎的研究として、テレワークの普及が地域構造に与える影響について分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
テレワークの普及が日本の都市構造に与える影響を分析した論文を、主に以下の2点について分析を拡張する予定である。 (1)分散均衡の安定性についての分析の拡張 (2)テレワークの普及が社会厚生に与える影響 以上をまとめた論文を学術誌に投稿した上で、そこで観察される地域構造の変化が地域文化創生の議論に与える影響について検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
残高が少額で適当な使い道がなかったため。
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