2022 Fiscal Year Research-status Report
都市集積における地域文化と労働力の多様性の持続可能性:空間経済学的分析
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20K01616
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
猪原 龍介 亜細亜大学, 経済学部, 准教授 (20404808)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地域間通勤費用 |
Outline of Annual Research Achievements |
テレワークの普及が地域経済に与える影響を考慮して、空間経済学の2地域モデルに地域間通勤費用を導入したモデルを使って分析を進めている。通勤費用の低下が居住地の分散化と就業地の集中化をもたらすことを日本の都市雇用圏のデータに当てはめることで確認した上で、そうした地域構造の変化が社会厚生に与える影響について分析を行った。そこで得られた結果はHelpman型の2地域モデルで得られたものと整合的であるが、より詳細には以下のとおりとなる。 集計的な社会厚生関数について、(A)雇用が2地域に対照的に分散している場合、(B)雇用が一方の地域に集中しており、一部の労働者がもう一方の地域に居住し、結果として地域間通勤が行われている状態、(C)雇用と居住がともに一方の地域に集中しており、地域間通勤が見られない状態の3つのケースについて比較する。その結果、(A)と比べて(C)の社会厚生が低下する場合があるが、地域間通勤費用が低い場合において(B)の社会厚生が(A)と(C)よりも高くなることが示された。つまり、地域間通勤費用の低下により居住が分散化し、集中地域での地価の高騰が抑えられることで社会厚生が改善しうることが示された。以上の成果をまとめることで、日本地域学会の年次大会(麗澤大学、オンライン)で報告を行った。 一方で、郊外地域への居住の分散が知識の伝播や文化的な刺激を通して当該地域の生産性上昇をもたらすとしてシミュレーション分析を行った結果、いずれの都市雇用圏でも郊外居住により社会厚生が改善することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では地域経済構造が地域文化の創成に与える影響を分析することを目的としているが、昨今のテレワークの普及が地域構造に少なからぬ影響を与えていると考えられる。こうした大きな経済環境の変化を考慮する必要があると判断した結果、基礎研究をまとめるのにやや時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られている研究成果を学術誌に投稿する予定である。その成果を踏まえながら、地域文化の創成と地域構造の関係について研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
宿泊や移動を伴う学会報告の機会がなかったために予算の執行額が少なくなったため。
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