2020 Fiscal Year Research-status Report
Founder human capital and its change in high-growth start-ups
Project/Area Number |
20K01618
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
本庄 裕司 中央大学, 商学部, 教授 (00328030)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アントレプレナーシップ / 創業者 / 継続・交代 / パフォーマンス / IPO / 資金調達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,日本のスタートアップ企業を対象に,創業者(設立時の経営者)の人的資本,創業者の交代とそのタイミングが参入後のパフォーマンスに与える影響を分析する.本研究の新たな取り組みとして,創業から成長までの時間軸での人的資本の変化に注目したうえで,創業者の交代について,家族(同族),親会社派遣,内部昇進,外部招聘に分類し,どのような交代タイプがスタートアップ企業のパフォーマンスに影響するかを明らかにする.また,近年,アントレプレナーシップ・中小企業分野では,経済社会の中でプレイヤーや要素を有機的に結合してアントレプレナーシップを推進する「アントレプレヌール・エコシステム」が注目を集めている.本研究では,これまで注目されてきたプレイヤー間の分業(提携)だけでなく,時系列でのプレイヤーの分業に注目する.具体的には,創業者の交代といった他のプレイヤーとの時系列での結びつきの有効性を示し,アントレプレヌール・エコシステムのあり方を論じていく. (1) スタートアップ企業の経営と所有の変遷:スタートアップ企業の設立およびその後に関与した関係者のデータセットを作成したうえで,創業者の人的資本とその後の変遷を明らかにする.現在,データセットの作成方法を検討している. (2) 創業者の交代とスタートアップ企業のパフォーマンス:すでに作成したデータセットに新たに交代のデータを付加したうえで,創業者の交代とスタートアップ企業のパフォーマンスとの関係を分析する.すでに一部分析を終えており,創業者が経営するスタートアップ企業は事業を存続しやすい傾向を示した. (3) 新興市場におけるIPO (initial public offering) 企業のパフォーマンス:新興市場のIPO企業の経営および所有の効果を検証する.すでにIPO企業のリストを完成させており,これに経営と所有のデータを付加していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は,(i) 先行研究・文献調査,(ii) モデルおよび推定方法の検討,(iii) データセットの作成準備,を中心に行った.また,(iv) すでに作成したスタートアップ企業のデータセットや新たに創業者の交代を付加したデータセットにもとづく実証分析に取り組んだ. (i) について,アントレプレナーシップ・中小企業分野を中心に,経営の変遷に関する先行研究をサーベイした.ただし,起業家だけでなく,ベンチャーキャピタルとの関係を取り扱った研究がいくつかみられていることから,経営のみならず所有の変遷に焦点をあてた先行研究もサーベイしていく. (ii) について,創業者継続企業と創業者交代企業とを比較するためにマッチング推定などの推定方法を学習した. (iii) について,新型コロナウィルス感染拡大にともなって,データ収集の準備にかなりの時間を要している.とくに,創業者の個人属性の効果的なデータの入手を検討していく必要がある. (iv) について,創業者の交代のデータを付加したスタートアップ企業のデータセットを用いて,創業者が経営するスタートアップ企業は事業を存続しやすい傾向を示した.一部の結果にもとづいてすでに論文としてまとめている.これを国際的な学術雑誌に投稿し,現在,査読者からのコメントをもとに改訂している.加えて,新たに創業者の交代のデータを作成するために,新興市場のIPO企業に限定した創業者の交代の研究に取り組んでいる.現時点で創業者の交代のデータの収集を完了していないが,すでにIPO企業のデータセットの作成を終了している.こちらについては,試験的な推定を試みており,IPO企業の昇進や降格(上場廃止)の要因を明らかにしている.今後,創業者の交代のデータを付加し,創業者の交代がIPO企業のパフォーマンスに影響するかを分析していく.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,(a) 現在作成を検討している創業者のデータセットにもとづく実証分析,(b) 創業者の交代のデータを付加したスタートアップ企業のデータセットにもとづく実証分析,(c) 新興市場のIPO企業のデータセットにもとづく実証分析,のそれぞれについて取り組んでいく. (a) について,創業者や創業者の交代にともなう継続経営者など,スタートアップ企業の設立およびその後に関与した関係者のデータの入手およびこれにもとづくデータセットの作成に取り組む.また,可能であれば,ベンチャーキャピタルや事業会社などの所有およびそのタイミングについてのデータを入手する.ただし,こうしたデータの入手が難しい場合,(IPO企業であれば経営や所有のデータを入手しやすいことから)(c)の研究に比重を移していくことも柔軟に検討したい. (b) について,創業後の交代と交代タイプのデータをすでに付加していることから,引き続き,創業者の交代および交代タイプの効果を検証していく.いくつかの推定を試みたうえで,頑健的な推定結果にもとづいて研究成果を論文としてまとめていく. (c) について,ぞれぞれの企業の目論見書をもとにIPO時点での創業者の関与また創業後の交代のデータを入手していく.ただし,設立からIPOまでの経営の変化は多様と考えられることから,目論見書の情報にもとづいて,これをいかに数量化していくかを検討する必要がある.こうした検討を踏まえてデータセットを完成したうえで,設立からIPOまでの経営の変遷と新興市場でのIPO後のパフォーマンスとの関係を明らかにしていく.また,目論見書から所有のデータを入手して,ベンチャーキャピタルや事業会社などの設立からIPOまでの所有の影響もあわせて検証していく.
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Causes of Carryover |
次年度に,180万円の使用額が発生している.その理由として,新型コロナウィルス感染拡大にともなって,データセットの作成に向けてのデータベンターとの打ち合わせ,また,実際のデータの購入,さらに,その後のデータ整理の作業の委託などを適宜実施することが難しかったためである.そのために,既存のデータセットによる研究のほうを優先的に取り組んだことから,当該年度の所要額を利用して新たなデータセットの作成に取り組むことが難しくなった.その結果,当該年度の所要額が大幅に減少したために,次年度使用額が大幅に増加することになった. 次年度の使用計画として,当該年度に実施できなかったデータの購入のための費用およびデータ購入後にデータを整理するための補助作業(アルバイト代)に使用することを計画している.
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