2023 Fiscal Year Annual Research Report
顧客情報を利用した継続的な企業間競争に対するミクロ経済分析
Project/Area Number |
20K01619
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
梅澤 正史 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 教授 (20361305)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 産業組織論 / ゲーム理論 / ミクロ経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の最終年度は販売戦略を踏まえた価格設定の問題に取り組んだ。より具体的には、複占市場において、企業が広告を利用しつつ顧客の購買履歴に基づいた価格差別を行う戦略の均衡分析の検討を進めた。購買履歴に基づいた価格差別は、通常の一律価格のケースに比べて企業利潤を悪化させることが知られている。広告は消費者の購買意欲を刺激するかもしれないが費用も発生する。そのため、企業は価格差別に加えて広告投資をすることでメリットはあるのかどうかを調べることが研究の主旨となる。情報提供的広告に関しては、Esteves (2009), De Nijs (2013)等によって研究が行われている。それを踏まえて本課題では説得的広告を考慮した。分析においては、製品差別化の度合い、広告費用、広告の拡張効果という要因をパラメータとして設定した。広告と価格差別を組合背による企業戦略が、これらのこれらのパラメータに応じてどのような影響を受けるのかについて分析した。各パラメータがそれぞれ適度に小さい範囲では両企業が一律価格設定を行っている場合と比較して、両企業が BBPD を行った場合の方が企業利潤は大きくなり、消費者余剰は小さくなるという結果を得た。一方で、各パラメータが比較的大きい範囲ではその逆の結果を得た。また、総余剰に関しては、一様価格設定時と比較して BBPD時の方が常に小さくなることを示した。 研究期間全体を通じて、顧客情報を利用した継続的な企業間競争に対するミクロ経済分析を行ってきた。1年目には、差別化された企業間の複占市場の継続的な契約問題について均衡結果を得た。2年目は、1年目の契約について企業の逐次行動に関する分析結果を得た。3年目は、スイッチングコスを考慮した価格差別の影響を分析し、企業利潤はいつ上昇するのかを解明した。そして4年目には、企業の広告戦略と価格差別の関係を明らかにした。
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