2020 Fiscal Year Research-status Report
開発途上国における貿易と経済成長が児童労働撲滅に与える影響に関する経済理論研究
Project/Area Number |
20K01621
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
北浦 康嗣 法政大学, 社会学部, 教授 (90565300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 和俊 同志社大学, 経済学部, 教授 (00329749)
焼田 党 南山大学, 経済学部, 教授 (50135290)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経済成長 / 貿易 / 児童労働 / 移民 / 格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,貿易と経済成長の関係が児童労働撲滅に与える影響について経済理論的に分析することである。 これまで国際機関・政府・企業やNGOなど様々な主体が児童労働の問題に対して取り組んできたが,いまだ解決には至っていない。本研究では,ILO (2017) による最新の推計を踏まえて,貿易と児童労働の関係に注目する。貿易の拡大が家計の児童労働選択に対して,どのように影響を与えるのかを分析した上で,児童労働撲滅を目標とする政策について検討する。 貿易の児童労働に与える効果は実証的には様々存在することが示されているので,長期的な観点からみたときに,どのような政策が効果的なのか経済理論的に明らかにする。その結果,様々な主体が児童労働撲滅について今後どのように対応すればよいのか,一定の指針を提示したい。 経済理論的には,これまで国際経済学や経済成長理論などの枠組みで,貿易と児童労働の関係や貿易と成長など2者の関係について個別に分析されてきた。しかしながら,近年の先進国や新興国のように経済成長を伴いながらの輸出拡大という事実を踏まえると,従来の分析では表現できない効果も生まれるであろう。そこで,本研究では,貿易と経済成長の関係が児童労働の撲滅に対して,どのような影響を与えるのであろうか,もし与えるとすれば,児童労働を撲滅するためには,どのような政策が効果的なのかについて,長期的な観点から明らかにしたい。 その際に,まずは貿易と経済成長および児童労働の3者の関係について経済理論モデルを用いて明らかにする。次に児童労働撲滅に関する個別の政策に注目し,その後,政策組合せの可能性を探る。その上で児童労働撲滅に関する政策提言を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,主に児童労働モデルを構築することに集中した。研究分担者の焼田は,今回申請したテーマの土台となるモデルを開発した本人である。このモデルには児童労働の要素がないため,2020年度は,このモデルをベースに各自が関心のある要素を取り入れることとした。 具体的には,研究代表者である北浦は教育を,研究分担者の焼田は移民を,研究分担者の宮澤は格差を,それぞれ導入する。モデル構築の際には活発な議論を行うことができるようにオンライン会議ツールを用いた打ち合わせを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年は前年に構築したモデルに個別の政策を導入する予定である。具体的には研究代表者である北浦は教育補助政策,研究分担者の焼田は移民管理政策,研究分担者の宮澤は所得移転政策(条件付現金給付政策など)を想定している。研究課題における成果は学術論文の形にすることを目標とする。
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Causes of Carryover |
2020年度は,海外での研究打合せを予定して,予算を計上していた。申請者は2019年にフィレンツェ大学のCigno 教授との共同研究の機会を得ることができた。Cigno 教授は,人口動態のトップジャーナルであるJournalof Population Economics のエディターも務めていたこともあり,児童労働に関しても多くの成果を挙げている教授である。彼らと交流するうちに,貿易と児童労働の関係に関心を持つようになった。今年度は,フィレンツェ大学にて直接,打ち合わせを行う予定であったが,新型コロナウイルスの影響により,その機会を失ったため使用額に変更が生じた。 今年度も,フィレンツェ大学での研究打合せの機会を探りつつ,研究を進めていく予定である。
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