2021 Fiscal Year Research-status Report
都心回帰現象についての考察―人口構造変化に着目した研究
Project/Area Number |
20K01623
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
坂西 明子 立命館大学, 政策科学部, 教授 (00316085)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 東京 / 人口移動 / 若年就業者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には主に、新型コロナウイルス感染症拡大が生じた2020年以降の東京圏への人口移動の変化とその要因についての研究を行った。2020年5月以降には、東京圏の転入超過はプラスであるが縮小している。中心都市の東京23区については、転入超過の縮小が大きく、コロナ禍以前の2019年までは20年以上に渡り転入超過が続いていたが、2021年には約8千人の転出超過に陥っている。これは、東京23区への他地域からの転入の減少と、東京23区から他地域への転出の増加の両方が生じたためである。コロナ禍前後の純移動について、年齢別にみた変化の分析、各種の移動指標を用いた分析を行うとともに、グラビティ・モデルの推計を行って、移動に影響を与える要因を考察した。そして、コロナ禍以降のテレワークの急速な進展による都市圏構造への影響についての考察を行った。その成果を、イギリスにある地域学会Regional Studies Associationが企画したCOVID-19による地域に生じた影響や地域政策を議論する国際会議で発表した。オーストラリアやブラジルなどの海外の研究者から、新型コロナウイルス感染症拡大以降に海外の大都市圏でも人口移動の変化が生じている状況など、今後の研究の参考となる多くのコメントが得られた。 また、2019年以前の新型コロナウイルス感染症拡大以前の東京圏の人口移動と若年就業者の流入要因の分析を性別に行った。東京圏ならびに東京都の年齢別にみた転入超過は10代後半から20代の若年層による寄与が大きく、特に2000年代以降には女性の転入超過が男性を上回る傾向にある。東京への若年層の移動者について、性別にみた移動要因の分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度には、新型コロナウイルス感染症拡大以降の東京圏の人口移動に関する考察など、新しい成果を出すことができた。その一方で、都心回帰を人口構造面から説明する理論モデルの構築とデータ分析については、まだ取り組んでいる途中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、2000年代以降の大都市圏内部の人口変化について分析をし、都心回帰現象の要因と空間構造の変化を考察することを目的としている。2022年度には以下の研究に取り組むことを予定する。第一に、新型コロナウイルス感染症拡大以降の東京圏の人口と雇用の変化について分析を行い、コロナ禍以降に中心都市からの純流出が進み、郊外化に転じた要因について考察する。第二に、都心回帰を人口構造面から説明する理論モデルの構築とデータ分析についての研究を進めて、研究発表や論文の形でまとめて行く。
|
Causes of Carryover |
最も大きな理由は、2021年度の新型コロナウイルス感染症拡大により、国内外の学会発表などの出張、特に海外への研究発表や調査のための出張ができなくなったことである。科研費の申請時には、予期していなかった事情による。2022年度には、状況が許せば、国内外で研究発表等を積極的に行い、旅費を執行したい。海外での調査が過去2年間行えず、延期となって研究が少し遅れており、2023年度も期間を延長して研究を行うなどの方法で、科研費の研究の目的や成果を達成することを今後検討する。また、2021年度に取り組んだ新型コロナウイルス感染症拡大以降の都市圏の構造変化について、英語論文の作成が途中段階である。2022年度に引き続き、必要となる書籍等の購入、校閲費の執行を行って、直接経費を使用することとする。
|
Research Products
(2 results)