2021 Fiscal Year Research-status Report
中国における水環境のSDGsに対応したSEEAによる定量化と政策シミュレーション
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20K01628
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
氏川 恵次 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (90361873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
申 雪梅 立命館大学, 経済学部, 准教授 (00636962)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境政策 / 環境評価 / SDGs / 経済統計 / 国民経済計算 / サテライト勘定 / 産業連関分析 / CGE |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の具体的内容については、関連データを用いて、供給・使用表、排出勘定、資産勘定、経済勘定から、ハイブリッド勘定と、貨幣評価を適用して包括的な貨幣勘定とした中国のSEEAを作成することにある。その計画としては、中国の水に関するSEEAの作成、水環境と経済活動の相互作用の定量的な明確化である。前年度の先行研究の整理とデータの精査により、中国の水に関するSEEAを作成した。水資源・排水と部門別経済活動との相互作用を明らかにする物的供給・使用表、水質汚染物質の排出量を示す排出勘定を物的単位で作成した。これに部門別経済活動の相互作用を明らかにする貨幣的供給・使用表を加えて、ハイブリッド勘定でのSEEAを推計した。その意義、重要性については、本研究によって、中国の水環境と経済活動に関する物的・貨幣単位での定量的な把握が可能となり、水ガバナンスの複眼的かつ包括的な明確化が可能となる。なお、産業連関表は国連方式に基づくアクティビティ型の拡張産業連関表であり、従来の産業連関表に比べると、統計的な信頼性、経年的データの整備、環境統計との分類の整合性、という優位性を有する。また、中国での既存の水環境政策に対するSEEAによる統計的な支援が確立でき、物的・ 貨幣単位のみならず包括的な貨幣単位での経済・環境政策の判断の基礎を提供可能となる。本研究では、国際統計基準であるSEEAを用いた、一国の資源ガバナンスの物的・貨幣単位の定量的な明確化と政策支援の先行モデルとなりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の具体的な研究目的・計画は、当初より、中国の水に関するSEEAの作成、水環境と経済活動の相互作用の定量的な明確化として設定していた。前年度にあたる2020年度における先行研究の整理と関連する各種統計データの整理により、中国の水に関するSEEAを作成することを目的としていた。先行研究の整理においては、国際的なSEEAの研究・実装の状況が明らかになり、とくにEU諸国や北米・オーストラリアといった先進諸国では、環境政策にSEEAが適用されていることがより明確にされた。研究の内容について、より具体的には、先ず中国における水資源および排水と、経済部門別の経済活動との相互作用を明らかにする物的供給・使用表および水質汚染物質の排出量を示す排出勘定を物的単位で作成することにあり、これらは具体的に推計を行うことができた。また、中国の経済部門別での経済活動の相互作用を明らかにする貨幣的供給・使用表を加えて、ハイブリッド勘定でのSEEAを推計することも行った。なお、SEEAは国民経済計算と並ぶ国際統計基準として、国連によってSDGsの評価の統計フレームワークとして推奨されており、関連するSDGs6では、排水の発生、環境への排出、処理・再利用過程、水資源の利用効率という諸指標があり、これらはSEEA勘定系列に対応したものである。これらに関して水環境と経済の相互作用を明らかにすることを試みた。以上によって、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、当初の研究目的および研究計画に沿って進めていく予定である。研究目的としては、SEEAに基づく拡張産業 連関表・CGEモデルにより、中国の環境政策が水環境の変化と経済活動に及ぼす効果を定量的に明らかにすることにある。大きくはSEEAから、水環境分析用の環境拡張産業連関表を作成する。同様に、SEEAから水環境分析用の社会会計行列とCGEモデルを推計する。また、これらの各モデルを用いて、現地・ヒアリング調査で収集した情報に基づき、政策のシミュレーションを行う。すなわち、経済的手段や直接規制のいかなる政策手段が、水資源、水質汚染物質、経済活動への影響をどれほどもたらすかについて、明らかにする。来年度は、中国の水環境分析用の拡張産業連関表・SAM・CGEモデルの推計をとくに集中的に進める予定である。まず前年度に推計したSEEAにより、水環境分析用の拡張産業連関表とSAMを作成する。具体的に、SEEAの供給・使用表や排出勘定から、国連方式に基づくアクティビティ型拡張産業連関表を作成する。また、貨幣単位で一元化したSEEAの供給・使用表からも産業連関表を推計する。他方、応募者が有する中国SAM作成の知見を活かしつつ、同様にSEEAの供給・使用表や排出勘定から、従来作成されてこなかった中国の水環境SAMを、物的・貨幣単位および貨幣単位に一元化したもので各々構築する。また、係数推定やプログラミングを行い、水環境分析用のCGEモデルを推計する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由と使用計画については、以下の通りである。まず物品費については、主に設備備品費について、研究調査を行うための新たな資料を収集する必要があり計上していた。資料・文献に関して、例年新しい文献が出版されることから、新規の資料・文献を、追加で購入を予定していた。今年度は、COVID19の影響によって渡航しての現地での渉猟と購入を差し控える必要があったため、当初の見通しに比して物品費に次年度使用額が生じることとなった。また同様に今年度はCOVID19の影響を受けて、現地での資料収集・調査、学会・研究会等での研究成果発表、対面での資料収集・調査・研究打ち合わせの幾つかをオンラインで代替しつつ、対応を行うこととなったため、旅費についても次年度使用額が生じることとなった。これに対しては来年度以降に使用額を繰り越して、各地でのCOVID19の感染状況および感染リスクを十分にふまえた上で、対面での資料収集・調査・研究打ち合わせ、学会・研究会等での研究成果発表を行う予定である。
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Research Products
(1 results)