2023 Fiscal Year Research-status Report
生産・研究開発の立地パターンと景気・雇用変動の国際マクロ動学分析
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20K01631
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
橋本 賢一 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (70403219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際マクロ動学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、労働市場において不均衡、すなわち失業を明示的には扱うことで、既存の研究で考察された国際間の経済分析がどのように修正されるか、この点について答えるものである。不況状態を捉える理論分析の枠組みに、国際間の産業構造を内生的に導入することで、国際化の進展を通じた雇用率や産業構造・生産拠点の変化などの相互依存関係を動学的な枠組みにおいて捉えることができるモデルの構築を試みる。 本年度は以下3本の論文をまとめた。論考(1)では、労働市場における雇用率(extensive margin)と労働時間(intensive margin)を内生的に扱えるモデルを構築した。特に、雇用率については労働市場の摩擦による構造的失業を導入し、労働時間については財市場における需要不足を通じた労働時間調整を考察した。このモデルを利用して、マクロ経済政策や労働政策が、雇用・労働時間および消費や生産活動にどのようなインパクトをもたらすかを理論的に明らかにした。論考(2)は、労働市場において、熟練労働と非熟練労働市場が存在し、企業の国際間の企業移動を許すモデルを構築した。特に、非熟練労働を用いる生産部門と熟練労働を用いる研究開発部門それぞれが、国際間で自由に企業が移動できるモデルを構築することで、近年の研究開発の立地が、途上国に行くケースや、逆に先進諸国に回帰する傾向などの特徴付けを理論的に導出した。論考(3)は、論考2で考察した経済の枠組みを利用して、生産企業や研究開発企業がどのように国際間で分布しているか、どのような状況の際に、研究開発の補助政策が経済成長に有効に働くのか、また自国や外国のそれぞれの経済厚生に与える効果はどのようなものか、最適な補助政策について理論的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究課題に従って以下の3本の論文をまとめた。論考1“Structural unemployment, underemployment, and secular stagnation” は雑誌Journal of Economic Theory、2023年4月に掲載された。 論考2“Innovation offshoring and reshoring with fully endogenous growth”は雑誌 Southern Economic Journal、2023年7月に掲載された。 論考3”R&D Subsidies, Innovation Location, and Productivity Growth” ISER Discussion Paperとして2023年12月にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) まず初めに、2020年度においてdiscussion paperでまとめた研究(国内の労働組合と国際間の企業移動と経済成長に関して研究)はほぼ分析を終えたので、海外査読誌に掲載をさせるように努める。また2023年度にまとめたdiscussion paperについて、ワークショップやセミナーで報告をし、コメントをもとにモデルの改善をおこない、修正を加えて、学術雑誌へ投稿することを考えている。そして、当初の研究テーマの雇用変動に関して、分析を進め、他のアプローチに関してサーベイをおこなったうえで、モデルを構築し、分析を進めることにする。
(次年度の研究費の使用計画) 構築された失業が存在する国際マクロ動学モデルのもとで、引き続き経済環境のパラメータについて解析的に均衡の性質を調べる。また数値計算に適当なPCを購入する予定である。モデル分析をおこなったそれぞれの研究について、コメントをもらうために、研究テーマに関しての有識者のところに研究報告をする。また日本経済学会や他の学会等で、研究成果を報告する予定である。雇用変動の他のアプローチの仕方に関してのサーベイのために、海外の学会や、国内の学会に参加をして資料を収集する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍における研究打ち合わせの回数が減ったことや、特に海外への出張に関して当初の予定よりも少なくなったため、次年度に繰り越しをおこなっている。 2024年度においては、多くの学会が対面に戻っている状況が予期されることから、当初予定通りの研究出張をおこなう予定である。
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