2022 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical Study on Sustainable Development in Developing Countries
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20K01636
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大東 一郎 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (30245625)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 再生可能資源 / オープンアクセス / 二重経済 / 都市失業 / 農業生産性 / 構造転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、開発途上国において「持続可能な開発」がどのような条件や政策の下で可能となるかを、農村都市間人口移動と都市失業のある二重経済モデルを基礎として、解明することにある。2022年に国際学術雑誌(Environment and Development Economics)に採択・掲載された論文での、農村部門でオープンアクセスの自然資源ストックを用いる資源財生産が行われる小国開放ハリス・トダロ(HT)経済の静学モデルを出発点に、以下の取り組みを実施した。 (1)農村再生可能資源ストックと都市失業率とが同時に変動するモデル:このモデルは、再生可能資源ストックと都市失業率の2変数の連立微分方程式で表されるため、その解の性質を正確に分析できる能力を高めるべく、非線形経済動学に関する勉強や文献調査に注力した。 (2)農村に資源財生産だけでなく農業生産もあるモデル:農村部門において再生可能資源の生育基盤(habitat)が農地転換される点をモデル化できる、正確で扱いやすい方法を探る考察を、いろいろな角度から行った。また、農業と工業の比重が変化する「構造転換(変化)」に関する最近の学術研究論文や、関連する現実経済(貧困削減の主要な対象とされているアフリカが中心)を論じた文献の調査を行った。 (3)近年の国際学界における都市インフォーマル部門の研究では、農村から都市への人口移動だけでなく、経済全体の人口増加も都市インフォーマル部門を拡大させる要因として重要との認識が深まっている。新たな分析視点としての「人口変化と経済発展との関係」に関する理解を深めるため、人口変化(人口減少も含む)を取り入れた経済成長モデルの分析を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に予定していたハワイ大学への留学渡航は、新型コロナウィルスの影響で、現地ハワイの共同研究者より研究会合延期の申し入れがあったため、中止せざるを得なくなった。そのため、「研究実績の概要」にある(2)の「農村に資源財生産だけでなく農業生産もあるモデル」に関する共同研究者との議論はあまり進捗しなかったものの、農地転換のモデル化、「構造転換(変化)」、現実経済を論じた文献の調査や分析能力の向上は進んでいる。上記「研究実績の概要」の(1)と(3)の活動も実施できており、研究内容面での進捗はおおむね順調であるように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)農村再生可能資源ストックと都市失業率とが同時に変動するモデルは、研究代表者の単独の研究としてモデル構築の取り組み、分析を進める。 (2)農村に資源財生産だけでなく農業生産もあるモデルに最も大きな努力を傾け、ハワイ大学への留学渡航により、現地ハワイ大学の共同研究者との対面議論を、集中的に進める。 (3)人口変化を取り入れた経済成長モデルも視野に入れ続けていく。
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Causes of Carryover |
2022年度は、予定していたハワイ大学での研究会合について、現地ハワイの共同研究者より新型コロナウィルスの影響で会合延期の申し入れがあったため、出張を中止せざるを得なくなり、旅費に未使用額が生じた。2023年度は、大学の派遣留学によりハワイ大学交換訪問研究者として渡航する予定である。これを機に研究会合を再開し、共同研究のモデル構築の議論を進め、分析結果の導出と原稿執筆を進めることとしたい。
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