2022 Fiscal Year Research-status Report
金融市場の発展が経済成長に及ぼす影響についての分析
Project/Area Number |
20K01647
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
國枝 卓真 関西学院大学, 経済学部, 教授 (60511516)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 金融市場の発達 / 知識資本 / 経済成長 / 内生的景気循環 / 中位所得の罠 / 直接投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
金融市場の発展は経済成長を促進させるのか、それとも阻害するのかを、理論的・実証的に分析することが本研究プロジェクトの主な目的である。金融市場の発展は、知識資本の蓄積やその蓄積を阻害する制度的な障壁にも依存するということが考えられる。そこで、2022年度は、知識資本の蓄積に焦点を当てて、その知識資本蓄積の促進や障壁の低減は、外国からの直接投資に強く依存するという仮説を立て、動学的一般均衡モデルを構築し分析を行った。 この分析結果はすでに論文としてまとめられており、NBERのワーキングペーパーとして発表されている。この論文では、国内技術のみを使用した場合と先進国から取り込んだ技術を使用した場合を比べて、経済成長にどれほど差が出てくるかを、構築した理論モデルに基づいて、東アジア主要8か国に対し定量的に検証した。その結果、先進国から取り込んだ技術は、国内技術のみを使用した場合と比べて、経済成長に対しておおむね65%の貢献があり、GDPの水準に対してはおおむね60%の貢献があることが分かった。この論文は現在国際雑誌への投稿に向けて準備中である。 更に、2022年度後半からは、この研究で構築した理論モデルに借入制約を明示的に導入したモデルを用いた定量的分析も開始したところである。上述したワーキングペーパーに加えて、2022年度は、金融市場の発展と内生的景気循環・金融市場の発展と雇用率を分析した2本の論文が国際ジャーナルに出版された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に引き続き、新型コロナの影響により、計画していた国内外の学会やコンファレンスに出席できなかった。このような不利な状況にもかかわらず、アメリカの共同研究者に日本を訪問していただき、対面での打合せを行うことができ、一本のワーキングペーパーを完成させることができた。これは、大変ありがたかった。更には、オンラインでの国際学会で研究報告が出来たのも幸いであった。加えて、2022年度は二本の研究論文が国際ジャーナルに採択され、出版された。また、新しい研究論文の執筆も開始することが出来た。以上により、本プロジェクトはおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度も2022年度と同様に、研究計画に従い、金融市場の発展が経済成長に与える影響を分析する。その中で、引き続き、知識資本の蓄積と経済成長の関連に焦点を当てるとともに、直接投資や借入制約を明示的に取り入れた方向に動学的一般均衡モデルを展開し、実際のデータを用いて定量的な分析を発展させていくことを計画している。
|
Causes of Carryover |
共同研究者と対面で研究打ち合わせを行うことや、対面での国内外の学会・コンファレンスに出席をする計画を当初は立てていた。しかし、新型コロナウイルスの影響により、それらの計画が実行出来なかったことが、未使用額が生じたことの理由の一つである。繰り越した額は、対面での研究打ち合わせや対面での学会参加のための旅費として使用し、当初の予定通り国内外の学会で研究成果を報告することに加え、実証研究のデータ購入に使用する。
|
Research Products
(4 results)