2021 Fiscal Year Research-status Report
Competitive Effects of Common Ownership
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20K01650
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 弘 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00361577)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コモン・オーナーシップ / 競争促進効果 / 競争阻害効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
コモン・オーナーシップとは競合する企業同士が、同一の経済主体によって株式所有されている状態を指し、「資本所有の共有化」とも表現する。競合企業の株式が同一の経済主体によって所有されれば、株主利益の最大化の観点から、競合企業間の競争は回避された方が良い。他方で、このような点は消費者の厚生の観点から問題を孕むものとも考えられる。本研究では、コモン・オーナーシップの競争阻害効果を定量的に計測する手法を提示し、わが国の具体的な事例に当てはめることで応用することを通じ、エビデンスが不足するわが国の現状に対し新たな知見の提供をすることを目的にしている。今年度は、コモン・オーナーシップの状況、及び資本所有の共有化が、わが国の市場の競争性にどのような影響を与えたかをモデルに依拠して、構造的に推定・分析する。その際には、既存企業におけるクロス・オーナーシップの果たした役割についても定量的に分析をすると共に、事業提携の慣習が与える影響も併せて推定することによって、コモン・オーナーシップの効果を識別することを目的にした。今年度においては、コロナ禍におけるデジタル化に焦点を当てて、具体的な事例として、社会インフラと電力システムを取り上げて、定性的な観点を含めて知見を深めた。社会インフラについては、とりわけ道路ネットワークと国際交通について分析を行い、GX(グリーン・トランスフォメーション)の観点からの重要性も指摘をした。電力システムについては、2020年4月に電力システム改革が貫徹する中で、自由化に伴う様々な組織連携が進む現状を書籍の1章という形でまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度においては、当初の計画通り、昨年度に引き続いて、研究目的で述べたコモン・オーナーシップの競争阻害効果を構造推定にて明らかにするためのモデル構築及びデータ収集・整理作業を行うことを目的とした。必要なデータとして、市場ごとの実績及び運賃を要するために、それらのデータを収集するとともに、データの申請や購入を行った。当初の研究計画時点では想定していなかった新型コロナウィルスの感染拡大の長期化を踏まえ て、コロナ禍が深刻化させている人口減少の観点から本研究課題を通じて見える産業政策の含意について発表を行うとともに、カーボンプライシングの観点からの技術的な動向についても提言を行った。またデータ蓄積がコロナ禍を通じて注目を集めていることを踏まえて、本研究課題の視点から、コロナ禍によるデータ蓄積がし状況や企業行動に与えている影響について、昨年度の分析を踏まえて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画機関の後期にあたるこの時期においては、この2年間でのデータ収集や誘導系を用いた推定結果を踏まえつつ、構造モデルにおいて推定された効果の識別における頑強性を確認し、インタビュー調査などから得られる結果から、推定モデルと推定手法の精緻化を図る。過年度おこなったデータ蓄積に関するコモン・オーナーシップからの含意について、更に深掘りした研究を行うことも視野に入れる。具体的には、データ蓄積に関して本研究課題の観点から横断的な産業に対する含意や簡単な統計分析も試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において海外での発表や国内外で予定していたインタビュー等調査を次年度使用額として生じさせたため。
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