2020 Fiscal Year Research-status Report
日本における子どもの貧困指標の構築とその長期的推移に関する研究
Project/Area Number |
20K01651
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松山 淳 富山大学, 学術研究部社会科学系, 准教授 (00624339)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 子どもの貧困 / 不平等 / 生活の質 / 多次元指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の子どもの貧困率は、1980年代後半から2010年代中頃に至るまで上昇傾向が続き、OECD諸国の中で見ても悪いことが、一般に広く知られるようになった。このような背景のもとで、新型コロナ感染症の蔓延の長期化が加わり、子どもの貧困の問題はますます見えにくなり、従ってその深刻さの度合いをさらに深めていると考えられる。こうした問題意識のもと、本研究では、①非金銭的な項目を考慮した暮らしの質の多次元指標の構築を全体的な構想とし、その具体的な取り組みとして、②子どもの多次元貧困率を計測し、③子どもを取り巻く暮らしの質が長期的にどのように変化してきたのかを分析するものである。 2020年度は、①と②に主に焦点を当ててつぎのような研究を行った。まず、「日本版General Social Surveys <JGSS-2012>」の利用して、家計類型別の多次元貧困率を求めた。具体的には、まずデータを入手したのち、2012年以前のデータの変数表も参考に、各調査間で比較可能な変数の選択を行った。ついで、貧困率の指標にはAlkire and FosterによるM0指数用いて、対象とする次元は「所得」、「雇用」、「健康」および「社会参加」に関する4つの項目からなるものとした。とくに、後者3つの非金銭的な項目に、金銭的な項目である所得に比べて、大きな重みを与えることで、暮らしの質の測定を目的とするよう指標を構築した。そして、暮らしの質を考慮した子どもの貧困率を計算し、つぎの知見を得た。M0指数で見た場合、子供のいない世帯に比べ、子どものいる世帯の方が暮らしの質がよいという結果が得られた。また、年齢階層別のM0指数について、どのカットオフポイントにおいても年齢階層があがるにつれて多次元貧困率が高くなることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、「日本版General Social Surveys <JGSS-2012>」の利用して、多次元貧困率を構築し、暮らしの質を考慮した子どもの貧困率の計測を行い分析を行った。分析の完成度を高めるために、並行して、統計学の基礎的な研究を進め、次元間の重みづけに関する理論研究に着手している。研究は着実に進展していると考えているものの、結果として、こうした基礎研究に時間の多くが割かれることになった。以上のことから、やや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、「研究実績の概要」で述べた①と②の研究の分析の深化を図りつつ、③の研究を進める。前者については、多変量解析の手法を用いて、次元に付与する重みを内生的に導出する。多変量解析の方法として、構造方程式モデルを予定。後者については、利用可能な各時点のJGSSのデータに、同様な手続きを経て、多次元貧困指標を計算する。その上で、子供を取り巻く暮らしの質が長期的にどのように変化してきたのかを分析する。研究を進めるときの一つの留意点として、データ提供元の東京大学社研データアーカイブ研究センター(SSJDA)では、「日本版General Social Surveys」の提供は2005年のデータまでと変更がなされた。そのため、それ以降のデータは他の機関への申請が必要となった。この点の検討が必要となっている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由。旅費については、新型コロナウイルス感染状況が深刻化し、県外移動が制限されたため、旅費を使用する機会がなくなったことによる。また、物品費については、申請時に想定した額よりも安い価格で購入できた物品がいくつかあり、結果として物品費が当初予定より抑えられたため。 使用計画。新型コロナウイルス感染の状況に大きく依存するが、旅費については、論文発表および学会発表などに使用する予定である。物品費は、オンライン会議・研究に必要なPC周辺機器等へ使用の予定。
|