2021 Fiscal Year Research-status Report
日本における子どもの貧困指標の構築とその長期的推移に関する研究
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20K01651
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松山 淳 富山大学, 学術研究部社会科学系, 准教授 (00624339)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 子どもの貧困 / 不平等 / 生活の質 / 多次元指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
貧困の問題は古今東西を問わず普遍的な問題であり、先進諸国における貧困は「豊かさの中の貧困」としばしば言われる。我が国においては、コロナ禍以前から子どもの貧困は喫緊の課題の1つであり、コロナ禍以後においても重要な問題であり続けると考えられる。2021年度の研究では、子どもの貧困に焦点をあて、主につぎの2つの研究を行った。 ①生年による違いが貧困に与える影響を分析するため、コーホート効果に着目した子どもの貧困の長期的推移に関する実証研究を行った。具体的には、「全国消費実態調査」の匿名データ(1989,94,99,2004年)を用いて、末子の生年に注目した世帯(コーホート)を説明変数に、コーホートごとに計算した4指標(貧困率、貧困ギャップ率、ジニ係数およびセン指標)のそれぞれを被説明変数とし、回帰分析によりコーホート効果を推定した。主な知見の1つとして、分析対象期間(89年から04年)における子どもの貧困率の上昇は, コーホート効果によるものであることが分かった。つまり、子どもの生年が新しい世帯になるにつれ、対応するコーホート効果は単調に増加することが観察された。このことは、より新しい時期に生まれた子供ほど、貧困のリスクがより高い社会に生まれたことを示唆する。 ②多次元指標を用いた子どもの貧困の計測に関する研究。「日本版General Social Surveys」(2012, 15年)を利用して、多次元貧困率を構築し、暮らしの質を考慮した子どもの貧困率の計測を行った。まずデータの入手ののち、2つの調査間で共通する変数の選択を行った。ついで、貧困率の指標にはAlkire and Fosterによる多次元指標を用い、子どもの生年別の家計類型ごとの多次元指標を計算した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、「全国消費実態調査」の匿名データを用いた長期的な視点からの子どもの貧困の分析を行った。また、「日本版General Social Surveys」の利用して、多次元貧困指標を構築し、暮らしの質を考慮した子どもの貧困率の計測を行い分析を行った。研究に基づき論文を執筆し、研究報告を行った。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、2つの方向性が明らかになってきた。①『全国消費実態調査』の匿名データの調査期間は1989年から2004年までである。『全消』の匿名データは2004年までしか提供されていないために、子どもの貧困について、さらなる長期的な推移に着目し研究を進めようとする場合(例えば、2010年代まで範囲を拡げる場合など)には、限界がある。そこで、調査期間のより長いデータを用いる必要性がある。この点に関する研究の推進方策として、調査票情報(たとえば、『全国消費実態調査』、『住宅・土地統計調査』、『国民生活基礎調査』など)を用いることが考えられる。調査票情報の利用申請を行い、利用許可が下り次第、研究に取り掛かる方針である。 ②多次元貧困指標の研究については、指標の構築の際に労働、教育、健康などの多岐にわたる質的な質問項目が不可欠である。その意味で「日本版General Social Surveys」は代表的な調査である。より新しい期間の調査を申請し、利用許可を得たのち、研究を進める方針である。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由。旅費については、Covid-19により、移動が制限されたため、旅費を使用する機会がなくなったことによる。また、物品費については、申請時に想定した額よりも安い価格で購入できた物品がいくつかあった。そのため、物品費が当初予定より抑えられた。 使用計画。Covid-19の状況に大きく依存するが、旅費については、学会発表などに使用する予定である。物品費については、研究・オンライン会議に不可欠なPC周辺機器等への使用を予定している。
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