2020 Fiscal Year Research-status Report
途上国における学力に応じた学習介入の長期効果検証と非認知能力の役割
Project/Area Number |
20K01668
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
関 麻衣 立命館大学, 経済学部, 准教授 (70771468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 康幸 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (40322078)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教育 / 自学自習 / 認知・非認知能力 / 無作為化比較対照実験 / 非市場競争 / スピード競争 / ピア効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、現在問題となっている開発途上国の「学習危機(Learning Crisis)」を解決するため、有効な教育介入の種類や方法を探る点にある。具体的には、個人別・学力別に自学自習で学ぶ学習法(公文式の数学教材を現地化したもの)をBRAC Primary School(BPS)の生徒に無作為に提供するフィールド実験を通じて収集したデータを解析する。また、追跡調査では、BPSを卒業した調査対象の元生徒達と保護者の追跡を行い、その後の進路や修論などについて調査を行う。2020年度は、フィールド実験を通じて収集されたデータの解析と、その長期的効果を探るための追跡調査の準備を行った。前者については、5月に"Haste Makes No Waste: Peer Effects of a Speed Competition on Math Score"と題して、介入群の生徒の日々の学習歴データを用いたピア効果解析(特にスピード競争の影響)をワーキングペーパーとして公開した(CIRJE-F-1151)。教育分野でのスピード競争の影響は我々が知る限り初めての試みであり、スピードが近い生徒同士が回答スピードおよび点数についてどちらも正の効果を得ていることが判明した。適切な競争環境の提供が教育に正の効果をもたらすという政策提言に繋がる結果である。11月には、教育介入が認知能力と非認知能力の向上に与えた正の効果に関する研究を大改訂したものをワーキングペーパーに再掲載した(CIRJE-F-1127)。査読付きジャーナルへの投稿や学会(オンライン)での発表も継続的に行い、COVID-19の影響を最小限に抑えられた結果といえる。一方、後者の追跡調査は実施に向けた対象者の居場所確認までは秋以降に開始したものの、COVID-19の影響から本調査の2020年度中の実施は見送った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の影響から追跡調査の2020年度中の実施を見送った。この追跡調査結果を元に3本目の論文を執筆する予定であるため、研究計画の一部が大幅に遅れているという認識である。
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Strategy for Future Research Activity |
教育介入にまつわるフィールド実験において、長期的な効果検証を行うこと自体に研究・政策分析上の価値があり、かつ、そのこと自体が本研究計画のポイントでもあるため、2021年度中の追跡調査の実施を計画している。引き続き、現地在住の共著者(すでにワクチン接種済み)と連携しながら計画を遂行する。具体的には、居場所確認の継続(捕捉率を上げる)、調査票のパイロットテスト、本調査の実施、を2021年度以内に完了する。データの解析と論文執筆は調査時期に依存するため見通しが立てにくいが、時期がずれ込んでも現在の研究チームで継続して取り組む。
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Causes of Carryover |
次年度はリサーチアシスタントの人件費が継続して必要となる。主に追跡調査の調査票準備とデータ整理にまつわる作業が主となる予定である。その他、英文校閲費用、学会発表にまつわる諸経費、および査読付きジャーナル投稿費用への支払いが見込まれる。旅費に関しては計上するものの、実施については状況を見て慎重に判断する。
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Research Products
(11 results)