2020 Fiscal Year Research-status Report
不確実性下における移民の理論・実証分析:分析フレームワークの開発
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20K01669
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
小川 貴之 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (40434782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 淳 神戸国際大学, 経済学部, 講師 (90845025)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不確実性 / 移民 / 動学的一般均衡理論 / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の3点の研究を行った。 (1)本研究課題の基本モデルとなるOgawa and Sakamoto (2018)を再構築し、国際学術雑誌への投稿を行った。現在、リバイス要求を得ている状況である。2021年5月中に論文を再投稿する予定である。 (2)2国・2財・2生産要素の新古典派開放経済において、労働者が他国の賃金率に関して「不確実性」を抱きながら、国際的な移住選択を行う理論モデルを構築し、交易条件や経済厚生に及ぼす影響を解析的に明らかにした。具体的には、ある1国における賃金率に関する「不確実性」の低下はその国への移民流入をもたらすが、それはその国で利用可能な中間財バラエティーを増やして生産効率性を引き上げることで便益をもたらす一方、その国で生産される最終財が増えることでその国の交易条件が悪化してしまう。このため、後者の効果が前者の効果を上回る場合には、「不確実性」の解消は移民流入を通じて、その国に既存の住民の厚生を悪化させてしまうことを発見した。現在、論文は9割ほど完成しており、2021年度には国際学術雑誌への投稿を行う予定である。 (3)Izhakian (2017)の手法を用いて、所得に関する各国の「不確実性(確率分布のゆらぎ)」を現実のデータから抽出し、その国際間での差が各国の移民の純流入の変化に統計的に有意な影響を与えているかを検証した。具体的には、2005年から2017年までのヨーロッパ30カ国のデータを用いて検証を行い、所得に関する「不確実性」が、その国への移民の純流入に有意に負の影響を与えていたことを発見した。現在、論文は8割ほど完成しており、2021年度には国際学術雑誌への投稿を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、初年度に行う予定であった分析を、計画通り、2020年度中に達成できた。現在、得られた研究成果をまとめた論文を再投稿および執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、2020年度の研究成果を論文として完成させ、国際学術雑誌への投稿を行う。また、2020年度に行った理論分析の結果が、現実のデータでもサポートされるかを実証的に検証する。具体的には、所得に関する「不確実性」の低下が、その国の交易条件を悪化させるか否かを、2005年から2017年までのヨーロッパ30カ国のデータを用いて検証を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に流行したため、予定していた国内学会および国際学会に参加できなかった。このため、国内旅費および外国旅費を使用することができなかった。新型コロナウイルスが収まり次第、積極的に学会で研究成果の報告を行いたい。
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