2023 Fiscal Year Research-status Report
An Analysis on the Announcement Effects of Monetary and Fiscal Policies
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20K01682
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
工藤 健 長崎大学, 経済学部, 准教授 (70404316)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 財政の持続可能性 / 経常収支の持続可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
経済政策に対する民間部門の反応として,第一に,日本とアメリカの経常収支および財政収支の持続可能性について,単位根検定に基づいて検証をおこなった。その結果,日本の財政赤字が持続可能とは言えないことがわかった。また,アメリカの経常収支の赤字も持続可能とは言えない。 そのうえで,レジーム転換を許容したマルコフ・スイッチング回帰モデルを用いて,財政収支の変化が民間貯蓄投資差額におよぼす影響を推定した。日本のデータを用いて推定した結果,1980年代までは財政政策の変化に対して民間貯蓄投資差額が強く反応するリカーディアン・レジームにあったと推測されるが,1990年代以降,その確率は急激に低下している。ここから,1990年代以降の日本では,財政政策の変化に対する民間経済主体の反応は鈍化しており,今後も進行する人口構成の高齢化などによる財政収支の悪化が,経常収支に影響をおよぼしうると推測される。 アメリカのデータを用いた推定の結果,1980年代前半まではリカーディアン・レジームにあるとは言い難い状況が継続していたが,1980年代後半から1990年代初めにかけて急速にリカーディアン・レジームの確率が上昇した。1990年代にいったん低下するものの,2000年代には再び急上昇している。ここから,アメリカでは財政政策の変化は比較的強い民間貯蓄の反応を引き出し,経常収支に影響をおよぼしにくくなっていることがわかった。この結果は,特に2000年代以降,アメリカの経常収支を持続可能な水準にするために大規模な為替や財政の調整を必要とするという先行研究と整合的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
財政政策に関連する論文は,日米の国際収支不均衡に関する分析と併せて,論文として公表できた。一方,金融政策や為替介入における政策アナウンスメントの効果に関する検証は,分析が進んでおらず論文としてまとめられていない。以上の点から,遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
債券市場をはじめとする金融市場のデータベースを整備したうえで、経済産業研究所などの政策不確実性指数のデータを取り入れて、金融政策や為替介入における政策アナウンスメントの影響を検証する分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
金融政策や為替介入の分析に使用するデータベースの選定を見直したため、支出をすることができなかった。今年度は、債券市場をはじめとする金融市場のデータベースを整備したうえで、経済産業研究所などの政策不確実性指数のデータを取り入れて、金融政策や為替介入における政策アナウンスメントの影響を検証する分析を進めていく。
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