2023 Fiscal Year Research-status Report
アジア途上諸国の空間的側面からみた所得格差とその要因
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20K01690
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
林 光洋 中央大学, 経済学部, 教授 (80367672)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アジア途上諸国 / 地域間所得格差 / 都市・農村間所得格差 / 地域内所得格差 / 教育の地域内・地域間所得格差への影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、中国の所得格差を空間的側面から分析する研究を開始した。西南財経大学が実施し、中国29省の都市部と農村部の約3万5,000世帯を調査対象にしたChina Household Finance Survey(CHFS)の2時点のデータを入手し、整理した。全国の省別、都市・農村別の最低生活保障額を用いて、時間の経過による物価変動の影響に加えて、地域間の物価水準の差も調整して、名目の所得(消費支出)を実質化した。そのデータを、「加法に分解可能」な特性を有するタイル尺度Tを用いて、地域内格差と地域間格差に分解し、それぞれがどの程度の格差の水準で、中国全体の格差をどの程度説明するのか、2時点間でどのように変化しているのかを計測した。通常のタイル尺度Tに加えて、Elbersの手法(maximum between-group inequality)を用いて地域間格差(between-group inequality)の説明力も計算した。今後、Blinder-Oaxacaの要因分解手法を用いて教育、年齢、ジェンダー、職業等の世帯特性の地域間格差への影響を計算し、論文にまとめる予定である。 格差の先進的な要因分解手法を研究した、Springer社刊のAkita・KataokaのRegional Inequality and Development: Measurement and Applications in Indonesiaを読み、国際開発学会の学会誌『国際開発研究』に同書の書評を投稿し掲載された。 2023年度は、フィリピンで2週間の現地調査を実施し、同国の地域間格差を観察した。ガーナでも現地調査を行ない、空間的な格差の実態を観察するとともに、ガーナ統計局(GSS)から家計データを入手した。アジア途上諸国と同様のスタイルの分析を行ない、将来的には比較分析を実施したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度の2020年度から2022年度にかけての3年間、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けて、当初計画したスケジュール通りに進まなかった。4年目になった2023年度になっても、その遅れを取り戻すことができていない状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
CHFSの1人当たり実質所得(消費支出)データを、タイル尺度Tを用いて、地域内格差と地域間格差に分解し、それぞれがどの程度の格差の水準で、中国全体の格差をどの程度説明するのか、2時点間でどのように変化しているのかについて、また、Elbersの手法(maximum between-group inequality)を用いて地域間格差(between-group inequality)の説明力についてすでに計算しているので、それらに加えて、Blinder-Oaxacaの要因分解手法を用いて教育、年齢、ジェンダー、職業等の世帯特性の地域間格差への影響を計算し、それらの分析結果を論文にまとめて発表したい。時間が許せば、ガーナ統計局(GSS)から入手した家計データ、Ghana Living Standards Survey(GLSS)を使い、アジア途上諸国と同様のスタイルの分析を行ないたい。将来的には、サブサハラ・アフリカ地域のガーナとアジア途上諸国(インドネシア、フィリピン、インド、中国)間の比較分析を実施したい。
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Causes of Carryover |
前述の通り、当初の3年間、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、進捗が滞ってしまった。2024年度は、フィリピンでの現地調査を実施し、これまで進めてきたフィリピン、インドネシア、インドに関する研究のまとめをしたい。さらに、空間的側面から見た中国の所得格差の分析を行ないたい。可能であれば、ガーナを同様なスタイルで分析したい。それらの研究活動にともなう支出を計画している。
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