2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01704
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
本田 衞子 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (00812364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼井 恵美子 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50467263)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 医師 / 病院従事 / キャリア経路 / 選択する診療科 / 女性医師の増加 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は医師届出票の提供を受けてから、データ整備に着手、研究活動に必要となるパネルデータの構築を行った上で、分析活動を開始した。研究発表には至っていないが、以下の内容を確認している。 【診療所従事開始】2004年以降、病院勤務の医師が医師全体に占める割合は増加しており、医師が診療所開設に到る傾向に変化が見受けられるものの、「病院勤務医が診療所を開設する傾向が強くなった」という認識は現在でもある。本研究での分析の結果、初めて診療所での従事(開設又は勤務)が確認された時点の医師の年齢が、経年に伴い上昇していることを確認した。これは、病院から診療所へシフトする時期は遅くなっていることを示唆していると認識。また、女性のほうが男性よりも診療所従事開始が早いこと、皮膚科、眼科及び耳鼻咽喉科を選択している医師は、他の診療科よりも早い段階で診療所従事開始になっていることを確認。診療所従事開始時点で医師が選択している診療科を用いて現在の分析を行っているが、この点については若年期に選択している診療科を用いて、分析する必要があると考えている。 【医籍登録年別かつ最初に従事する病院の別による傾向】医籍登録年に従事する病院が医育機関(大学病院)か医育機関以外の病院かにより医師を分類し、医籍登録後10年後、20年後、30年後及び40年後に病院従事者であるのか、診療所従事者であるのか等についての確認を行っている。例えば、1976年に医籍登録を行った医師は、最初の選択に関わらず、6割程度が2016年までに診療所従事を選択している。診療所従事の状態については、男性医師は開設者が多く、女性医師は勤務者が多くなる傾向にある。但し、10年以内に診療所従事となる医師については、男性も勤務者として従事開始する医師の割合が拡大している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度はデータ整備に注力するだけになることを予想していたものの、分析作業を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
医師のキャリア形成についての計数分析を継続して行う。本田と臼井とは個別に研究活動を行っているものの、必要に応じて意見交換を行い、各自の研究活動に活かす方針である。 【選択する診療科】5.に記すように、若年期の選択診療科を用いて、診療所従事開始について分析する。また、診療科Aを最初に選択していた病院に従事する医師が経年に伴い診療科Aの選択を止めるようになるまでの期間を測定し、診療科ごとの従事期間の長さに有意な差があるかどうか、診療科ごとに病院従事の期間についても有意な差があるかどうかについて分析する。 【女性医師の増加】5.に記すように、男性医師は診療所開設者が多く、女性医師は診療所勤務者が多くなる傾向にあるが、年齢階級別等、この点に関連した詳細な分析を継続して行う。また、女性医師の増加がコーホートごとの行動パターンに影響を与えているかどうかという視点からの分析を行う。 【医師届出票からだけでは得られない情報の補強】資金確保の難しさから開業が困難になっているのではないかという視点から、医療施設整備のための貸付事業を行っている団体へヒアリングすることを当初は検討していたが、当該団体が多忙になったこと及び当面は多忙の状態がつづくと予想されることを踏まえ、当該団体へのヒアリングを行うことだけには拘らず、何らかの方法で病院に従事する医師への意識調査を行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
【令和2年度】実際にデータ処理を開始して既存PCで処理可能なデータ量であると判断したため、新規のPC購入を見送った。また、当初予定よりも作業補助のためのスタッフ採用(時間)を減らしており、人件費の費消が少なくなった。 【令和3年度】8.記載の通り、ヒアリング実施については当初予定を見直す方向で検討中である。仮にヒアリングではなく、代替手段としてアンケート(病院従事者への意識調査)を行う場合、アンケート実施に必要となる費用額はヒアリング謝金を大幅に上回ると予想している。アンケート実施の場合は、令和2年度よりの繰越し額の多くをアンケートのために利用し、令和3年度も人件費を節約する等してアンケート実施の費用額を捻出する予定である。
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