2020 Fiscal Year Research-status Report
長期停滞経済下における財政乗数の計測:二つの大震災に対する復興投資の比較
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20K01706
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮崎 智視 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (20410673)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 財政乗数 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、主にデータの収集と整理を進めた。 標本期間は、阪神・淡路大震災と東日本大震災という二つの震災について、その前後の期間を対象とする必要がある。一方、2004年前後で市町村合併が盛んになされた。このことを踏まえ、阪神・淡路大震災については合併前の自治体を対象として1985年から2003年、東日本大震災については合併後の自治体を対象として2006年から2017年の期間について、それぞれデータを収集することとした。 財政乗数の推定にあたっては、アウトカムとなる変数を集める必要がある。昨今の関連研究の動向を踏まえるならば、生産量だけではなく就業者を対象とすることも必要である。以上のデータが市町村レベルで入手可能な統計である、経済産業省「工業統計表」のデータを整理・収集した。また、推定で用いるであろうその他の変数の候補として、総務省「地方財政統計年報」、「住民基本台帳人口移動」などの市町村レベルのデータについて収集・整理を進めた。整理したデータを現時点で観察したところ、東日本大震災後に被災地において顕著に就業者が増えていることが確認される。このことは、ゼロ金利が常態化した状況においてなされた東日本大震災関係の復興策については少なくとも正の効果があったことを示唆するものとも言えよう。 このほか、今回の研究の理論・実証両面での先行研究の整理・展望を示す論文をまとめ、関連研究として、国際共同研究である「A Model for Built Environment Effects on Model Usage」をDiscussion Paperとして公刊した。また、市町村の税制に関する論考を執筆・公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サーベイ論文の執筆を通じて、理論的背景や必要な実証分析の手法については整理されている。今後2年間の分析で必要とされるデータはほとんど収集している。アウトカム変数は決定しかつ整理を終えている。研究を進めていく中で追加をする必要が生じることは否定できないものの、コントロール変数の候補となり得る変数も含め、上記の期間についてパネルデータを既にそれぞれ構築している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きデータの整理・吟味を継続しつつ、2021年度は主として阪神・淡路大震災の復興策についての実証分析を進めたい。必要に応じて、兵庫県内自治体関係者に対するヒアリング調査なども行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
欧州および米国で開催される国際学会に参加予定であったものの、新型コロナウイルスのために渡航ができなかった。2021年度には、対面での国際学会がいくつか計画されているため、そちらに参加・報告する予定である。
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