2021 Fiscal Year Research-status Report
選挙制度改革がもたらした選挙公約への影響に関する研究
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20K01714
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
江口 匡太 中央大学, 商学部, 教授 (50302675)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 選挙制度改革 / 小選挙区 / 中選挙区 / 衆議院 / 参議院 / 政党 / 選挙公報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「選挙公報」を用いて、衆議院の小選挙区制導入後に政治家の選挙公約がどのように変わったのか、(1)政党主導の選挙運動、政治活動が強まったかどうか、(2)地元選挙区への利益誘導が強まったのかどうか、を中心に検証する。この二点に注目するのは、中選挙区制は政党主導よりも候補者主導の選挙戦を促し、地元への利益誘導を進める制度と考えられているからである。 (1)については、2021年度は日本経済学会秋季大会で論文発表を行い、そこでいただいたコメントや議論をもとに、改めてデータベースの再構成と計量分析を行い論文にまとめた。本論文は選挙公報にみられる候補者の個人名と所属政党名の大きさを測り、その大きさを候補者個人と所属政党のアピールの程度を測る尺度とした。その結果、候補者全体では小選挙区導入後は候補者個人のアピールは統計的に有意に減り、政党名のアピールは有意ではないが強まっていることを明らかにした。これは、選挙制度改革によって、政党中心の選挙戦へ変化していくという通説と整合的な結果であった。 さらに、自民党候補と他の候補とを比較し、自民党候補ではむしろ政党のアピールは減り、候補者個人のアピールが増えている現象を発見した。旧制度で複数の候補者をたて激しい党内競争を行ってきた自民党候補こそ、小選挙区制では政党主導型へ顕著に変化するという予想とは反する結果である。この結果は自民党候補の後援会を中心とした選挙戦が未だ継続していることを示唆している。現在は本論文を英文学術誌に投稿する準備を行っている。 (2)については、都道府県の中で、改革前後で区割りが変わっていない選挙区のある東京都、北海道、秋田県、新潟県、富山県、石川県に限定して、地元への利益誘導に関する公約を3段階に分けてデータのコード化を進めている。東京都については終了し、他の道県について作業を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、データベースのあらましをまとめた論文を中央大学企業研究所の『企業研究』に掲載し、計量分析を行った論文を日本経済学会秋季大会で発表することができた。現在は英文学術誌の投稿の準備を進めている。コロナ禍のため、内外の出張ができず、また、直接アシスタントを雇用してデータ入力の作業を行うことができないなど支障もあったが、地元への利益誘導など全国の候補者に拡大したデータベースの構築も一定程度進んでおり、概ね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでのデータベース作成作業を継続して進め完成させる予定である。また、候補者名と政党名の大きさに注目した論文は学術誌に投稿し、それ以外の候補者名と政党名の頻度に注目した研究と、地元への利益誘導に注目した研究は計量分析作業を行い、できる限り早く学術論文としてまとめたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、コロナ禍による国内外の出張がまったくできなかった、半導体不足によるパソコンなどの機器の納品に時間がかかった、さらに、データ入力の作業を遠隔地の作業者に依頼しやり取りに時間がかかった、ためである。
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