2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01716
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土門 晃二 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00264995)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コピー商品の外部性 / 日本文化コンテンツ / インバウンド需要 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、二本の論文を執筆した。いずれも、意匠権および著作権に関するもので、オリジナルおよびコピー商品から派生する二次的な市場の存在が、権利保護の有効性に与える影響を分析した。 最初の論文は、三つの市場(オリジナル商品、コピー商品、派生商品)の市場均衡点では取り締まりのレベルに関して権利保有者の利潤関数が凸関数になることを証明した。この場合、権利保有者にとって最適な取り締まりのレベルはコーナー解になる。いずれのコーナー解になるかは、正の外部性の影響を受ける派生商品市場の規模によって決まり、その規模が大きい場合には、権利保有者は権利を放棄することが最適になる。現在、本論文は英文学術雑誌での審査過程で、二回目の修正を行っている。 次の論文は、上記の議論を拡張し、訪日外国人旅行客(インバウンド)と日本文化オンライン・コンテンツおよび関連商品との関係を分析した。理論分析から、インバウンド需要は権利侵害の取り締まりによって減少することが明らかになった。このことから、二次的市場の規模によって、権利保有者は取り締まりに関する誘因の相違が生じるが、国内観光業にとっては常に取り締まりは負の効果を持つことがわかる。この論文ではまた、この取り締まりに関する齟齬を修正するための産業政策を理論的に考察した。さらに、理論的な議論の背景をオンライン・アンケート調査のデータを用いて分析し、日本文化の中でマンガやアニメ・コンテンツのインバウンドに対する影響が非常に大きいことを実証した。現在、本論文は英文学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、意匠権を中心とした新産業勃興と権利侵害の関係を分析する計画であった。一部著作権も関係するが、コピー商品の二次市場(オリジナル)への影響をECおよびインバウンドといった市場を対象に分析し、知的財産権侵害と新産業との関係を考察することができた。論文予稿を二本執筆でき、初年度の研究成果を出すことができた。 しかしながら、新型コロナウイルスの影響により、国内・海外でのセミナー・学会発表を実施できず、研究者との意見交換や交流ができていない。この点が、計画通りに行かなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、研究計画通りに著作権を対象とした法・経済学分析を実施する予定である。前半は、文献調査および侵害行為の具体的な事例を収集する予定である。後半に向けて、学術論文の執筆および学会・セミナー発表を行う。ただし、新型コロナウイルスの影響から発表ができない場合には、オンライン・セミナーを主催し、海外との研究者との意見交換に変更する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルスの影響により、予定していた海外学会発表およびセミナー発表ができなかった。また、図書館の閉鎖により、学生アルバイトを雇用して行う予定であった古い文献の収集・整理ができなかった。実施できたものは、オンラインでアクセス可能な学術雑誌を用いた理論分析のみであり、予定していた調査研究の一部しかできず予算が使用できなかった。
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