2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K01716
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土門 晃二 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00264995)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 模倣デザイン / 意匠権侵害と外部性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、最近のアパレル産業などで問題となっている模倣デザインの違法性について、モデル分析を行った。公開されるとデザインはオンライン上で瞬時に伝達されて、模倣スピードを急速に早めている。特に、アパレル産業では、模倣の容易性から大きな問題になっている。中国では、海外のファッションショーなどの映像はすぐに工場に送られ生産工程に入る体制が築かれており、オリジナルの生産者は多くの訴訟を起こしている。 意匠権に関して違法性の判断が緩いアパレル業界などで、このような状況をどのように考えるのかに関して法学者による学術的な考察も多い。一方で、経済学的なものは少なく、理論的な分析はほとんど存在しない。本研究では、財の類似性(流行)がもたらす正の外部性を考え、製品差別化モデルを用いて外部性の強弱が違法性判断に与える効果を考察した。 外部性が小さい場合には、模倣企業の参入はオリジナル生産者の利益が減少させることから違法性があると判断できる。一方で、外部性が大きい場合には、模倣企業の参入はオリジナル生産者の利潤を増加させることから違法性がないと判断される。また、理論的な議論として模倣者数を規制変数とする上記の議論と内生的に模倣者数が決定される場合を比較し、それぞれのサブゲーム完全ナッシュ均衡の大小関係に関する定理を求めている。 以上の考察は、特許権の公開による効果の分析にも共通したものであり、特許を取得した企業が敢えて競争相手に特許を公開する根拠を示している。近年では、トヨタ自動車がハイブリッド・エンジンや燃料電池の特許を公開したことがこれに該当すると考えられる。この場合は類似性の外部効果ではなく、共有部品やインフラ設備の規模拡大による費用面の外部性を狙ったものと解釈できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度前半はコロナパンデミックの影響がまだ残っていたが、海外現地調査および海外でのオンラインセミナーの開催もでき、また国内の研究集会で研究成果発表もできた。さらに、昨年から執筆していた予稿論文をSSRNにディスカッション・ペーパーとして公開できた。昨年から考察を続けている意匠権侵害の論文も、順調に執筆を続けることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であり、知的財産権全般にわたる本研究課題のまとめ的な考察進めるとともに、海外での成果発表を行っていく予定である(すでに申請済み)。できれば、英文雑誌の論文だけではなく、この研究をまとめるために日本語の著書を執筆する予定である。
|
Causes of Carryover |
2022年度は、コロナパンデミックの影響で海外学会・セミナー発表が予定通り実施できなかったために、使用額が少なくなった。2023年度は、すでに英国での学会発表の申請を行っており、また補助的な研究を充実させる予定である。したがって、使用計画に沿って研究を進める予定である。
|