2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the impact of cognitive ability and financial literacy on household savings, labor supply, and wealth accumulation
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20K01717
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
中田 大悟 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員 (10415870)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リスク認知 / 新型コロナ感染症 / 移動 / 旅行 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研費研究においては、家計の金融リテラシーや認知能力の差異が、貯蓄行動と就業行動を、どのように規定しているのかという問題について、シミュレーション分析とミクロ計量経済分析で明らかにすることを目的としている。 2021年度においては、前年度から継続研究テーマとして、新型コロナウイルス感染拡大期間における人々のリスク認知に着目し、新型コロナ感染リスクが経済行動、とくに移動、対人接触、宿泊旅行どのような関係にあるのかという点に関する分析を行った。具体的には、傾向スコアを用いた逆確率重み付き推計を行い、コロナ禍における人々の移動、対人接触、宿泊旅行が新型コロナ感染リスクにあたえた平均処置効果(ATEおよびATT)を推定した。分析に用いたのは、2020年10月から2021年10月までの期間に3ヶ月間隔で行われたインターネットアンケート調査(パネル調査)の個票データである。 分析の結果は、以下のとおりである。まずコロナ禍において、宿泊旅行と対人接触は、レベルとしては高いものではないが有意な感染リスクをもたらしていた。そのリスクは、対人接触の方が宿泊旅行よりも高く、また時期や属性によっても影響は異なる。旅行については、コロナ禍の比較的早い段階では有意なリスクではなかったが、感染拡大が進んだ後は一定のリスクとなっていた。さらには、単なる外出行為そのものは、新型コロナ感染に対してはほぼリスクではなく、これはコロナ禍におけるどの時点においても不変的な結果となっていた。分析においては、ワクチン接種者と未接種者を分割したサブサンプルを用いることで、新型コロナワクチンが移動、対人接触、および移動が与える感染リスクをどの程度抑えたかどうかも検証した。結果は、旅行および対人接触において、ワクチンが強いリスク低減の効果をもたらしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画では、別のデータセットを用いた家計の金融リテラシーと将来不安がリスク資産の保有比率に与える影響や資産蓄積行動、 特に無資産世帯の属性の決定要因に関する実証研究と、中高齢者の金融リテラシーが年金受給の繰り上げ、繰り下げ受給に与える影響に関する実証研究を進める予定であったが、これを実施できなかった。これは、前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大が、リスク認知と経済行動に関する研究の政策的緊急性、必要性を増大させたことによるものであるが、次年度は、この新型コロナウイルスと経済行動に関するデータと、前述の金融リテラシーのデータを用いた双方の分析を、同時に推進することで、研究の遅れをリカバリーする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、2022年度は、家計の金融リテラシーと将来不安がリスク資産の保有比率に与える影響や資産蓄積行動、 特に無資産世帯の属性の決定要因に関する実証研究と、中高齢者の金融リテラシーが年金受給の繰り上げ、繰り下げ受給に与える影響に関する実証研究の改訂を推し進める。 これに併せて、3つ目の分析テーマとして掲げていた、認知能力と金融リテラシーの低下が、家計の主観的な認識や予測、特に余命や健康状態に関する認識とどのような関係にあるのかを探る分析を、年度の後半以降に本格的に開始することとしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、発注した分析用のパソコンが未だ納品されていないことが最大の要因である。これに加えて、学会発表等での研究出張旅費の支出がなくなったことも理由の一つとなっている。この残額については、2022年度において、発注済みのパソコンが納品され次第、支出される。また残額は分析のためのソフトウェアの購入、更新費に充てる予定にしている。
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Research Products
(3 results)