2020 Fiscal Year Research-status Report
非金銭的インセンティブが労働者の努力水準に与える影響を探る実証的研究
Project/Area Number |
20K01719
|
Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
奥井 めぐみ 金沢学院大学, 経済学部, 教授 (90333161)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 仕事満足度 / インセンティブ理論 / 努力水準 |
Outline of Annual Research Achievements |
少子化・高齢化により日本の労働人口は減少していくことは明らかであり、いかに労働者の生産性を上げるかは重要な政策課題となっている。本研究では、生産性を上げる方法の一つとして、労働者の労働意欲を高める効果的なインセンティブを与えるためにはどうしたらよいか、について実証的に分析を行うことを目的としている。特に、金銭的インセンティブだけでなく、非金銭的インセンティブに着目する。 以上の目的を踏まえ、2020年度は、既存のアンケート調査を利用し、仕事満足度に影響を与える要因についての分析を中心に行った。まず、育休後の女性の活用も重要になってくることを踏まえ、育児休業取得後の女性について、仕事満足度に影響を与える要因を調べ、サンプルが少ないながらも、育児休業取得期間が長すぎることはかえって仕事満足度を下げる結果になる点を示した。この結果より、育休後の早い復帰をサポートする施策の必要性が示唆される。また、仕事満足度の男女間格差についても分析を行い、これは2021年度に学会報告予定である。女性は男性に比べて仕事満足度が高いことが知られているが、それは、男女で仕事の上で価値を置くものが異なることが原因という結果が導き出せた。先行研究より、高い仕事満足度が生産性につながることが示されていることから、この研究結果が、企業が人定資源を生かすためのヒントとなる結果が得られると期待される。 さらに、非金銭的インセンティブに関連して、キャリアコンサーン、すなわち、若いほど努力水準が高いが、勤続年数が長くなるほど、労働者の評価が確定し、将来も見えてくるので、努力水準が下がる、という傾向についても2015年という比較的新しいデータで分析を行い、長期雇用が崩れている現在において、キャリアコンサーンがどの程度存在するのか分析を来なっている。この研究で、昇進の在り方についての問題提起を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
要因を中心に実証分析・論文執筆を行った。分析には、前回の科研費の補助を得て、2015年に行った独自アンケート調査を利用した。この調査には、今回の研究テーマに有益な情報が多く含まれており、新たなアンケート調査を実施する前に、既存のデータでできる限り、今回の科研費研究テーマである「非金銭的インセンティブと努力水準」に関わる研究を行うこととした。 さらに、既存のアンケート調査を利用した研究を行うことで、より厳密な分析のために不足している情報を確認し、新たなアンケート調査の質問項目設計に向けての課題をピックアップし、2021年度に予定しているアンケート調査実施の参考とした。 論文の発表については、日本労働研究雑誌に応募した『育児休業取得期間が復帰後の女性の仕事満足度に与える影響』が12月号に掲載され、育児休業後の女性の仕事満足度に影響を与える要因を明確にした。続いて、共同研究者と進めていた男女の配置転換経験が昇進に与える影響について、2つの論文にまとめた。1つは、2020年度大学紀要に掲載し、もう一つは、現在も改定を進め、査読付き雑誌に投稿する準備を進めている。この研究は、直接は仕事満足度について明示的に扱っていないが、昇進が仕事満足度にプラスの影響を与えることは知られており、今後、職場経験が仕事満足度に与える影響についても研究を拡張する予定である。 仕事満足度に与える影響についてはさらに、動学的インセンティブ理論で示されるキャリアコンサーンに注目し、論文のサーベイならびに、新たな論文作成の準備を行った。これは2021年度の春季学会報告を目指している。また男女の仕事満足度格差に注目した分析もスタートさせ、同様に2021年度の春季学会報告に応募するための準備を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度の日本経済学会春季大会では、キャリアコンサーンの有無を実証的に分析する論文を報告、労務学会では、仕事満足度の男女間格差に関する実証分析を報告する予定で、すでに申し込みが終了している。学会での報告結果を受けて、これらの研究をリバイズし、学会誌や査読付き雑誌への投稿を目指す、 また、既存アンケート調査では不足している情報を確認した上で、新たなアンケート調査に向けて、調査票の作成を検討し、年内には独自アンケート調査の実施を計画している。
|
Causes of Carryover |
今年度、コロナ禍で出張費は発生しなかった。次年度はアンケート調査の実施を計画しており、よりサンプルサイズの大きく、質問項目の多いアンケート調査を実施するために、次年度使用額を利用する予定である。
|