2020 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣の実証研究ー政策効果・地域差・変容過程の解明
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20K01723
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 さやか 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (20511603)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 子ども / 食習慣 / 肥満 / 生活習慣 / 給食 / 栄養 / 痩せすぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
給食が子供の体型に与える影響について分析した研究代表者と研究協力者(オーストラリア シドニー工科大学 UTSビジネススクール 准教授 丸山士行)の共著論文 "Wholesome Lunch to the Whole Classroom: Short- and Long-Term Effects on Early Teenagers’ Body Weight"を査読付国際学術誌"Journal of Political Economy"に投稿し、修正して再投稿するよう求められたため、現在国民健康栄養調査を利用してさらに分析を行うとともに、原稿を改訂し、再投稿の準備を進めている。また、この論文を研究代表者がフェローとなっている東京経済研究センター(TCER)のワーキングペーパーシリーズに投稿した。 この論文では、1975年から1994年の国民栄養調査の個人レベルのデータを用いて、公立中学校での学校給食の有無が中学生の体重に与える影響を検証した。サンプル全体ではボディマス指数(Body Mass Index, BMI)、肥満、痩せすぎのいずれの指標においても中学校給食による有意な影響は認められない。しかし、社会経済的地位の低い世帯、すなわち、父親職業がホワイトカラーでない子供や一人当たり世帯支出の低い世帯の子供にサンプルを限定したサブサンプル分析では、給食があると有意に肥満が減少するという結果が得られた。さらに、この肥満減少効果が中学卒業後数年間は持続することから、給食は健康的な食事を通じて直接的に肥満を減少させるだけでなく、健康的な食習慣を身につけさせることで長期的な肥満減少につながることが示唆された。一方で、痩せすぎについてはサブサンプル分析でも学校給食による有意な効果は見いだせなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国民生活基礎調査の調査票情報の利用申請を2020年7月に行ったが、2021年4月30日現在、いまだに許可が下りていない。今まで同調査について同様の申請を行った際には一か月程度で使用許可が下りたが、今回は新型コロナウイルス感染症感染拡大による厚生労働省の業務過多により書類審査がいまだに行われておらず、いつ利用許可が下りるかわからない。当初予定していた分析には国民生活基礎調査の個人レベルのデータが必要不可欠であるため、いくつかのテーマについては分析が開始できないでいる。 一方で、論文を国際学術誌に投稿し、再投稿を求められるという進展があった。また、景気変動による生活習慣や健康状態への影響に関して、内外の先行研究について文献調査を行い、検証すべき仮説や計量分析モデルの特定化を進めるとともに、各都道府県の景気指標のさまざまなデータを公的統計から集め、整理した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、"Wholesome Lunch to the Whole Classroom: Short- and Long-Term Effects on Early Teenagers’ Body Weight"を査読付国際学術誌"Journal of Political Economy"に投稿したところ、修正して再投稿するよう求められたため、さらに分析を行うとともに、原稿を改訂し、再投稿の準備を進める。 研究計画に挙げたテーマのうち、景気変動による生活習慣や健康状態への影響の分析については、審査に時間がかかっている国民生活基礎調査の個人レベルのデータも重要ではあるが、すでに使用許可が下りている国民健康栄養調査の個人レベルのデータで分析可能な部分もあるため、可能な範囲で分析を進めていきたい。 研究計画に挙げた他のテーマについては、国民生活基礎調査の個人レベルのデータが必要不可欠なため、国民生活基礎調査の調査票情報の使用許可がおりるのを待って分析を開始したい。
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Causes of Carryover |
去年度の使用計画で最も大きな割合を占める旅費の支出がゼロになったのは、新型コロナウイルス感染症感染拡大により海外出張が不可能になり、海外の研究協力者に日本に来てもらうこともできなくなり、国内出張も困難になったためである。また、その他の項目についても、厚生労働省に分析に用いる主要な個人レベルのデータを申請したが同様の理由から審査開始が大幅に遅れ、データの利用許可が下りていないため、分析に用いるPCの購入や研究補助者の雇用を先延ばしにした結果、昨年度の使用額がゼロないし非常に小さくなった。
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