2020 Fiscal Year Research-status Report
Economic Analysis of International Taxation
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20K01725
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷川 誠 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (50722542)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際課税制度 / 多国籍企業 / 利益還流 |
Outline of Annual Research Achievements |
多国籍企業は海外で稼得した利益を本社に戻すために、海外子会社から配当・使用料・利子などの投資所得を親会社が受け取る。このような行動は利益還流と呼ばれる。本年度は国際課税制度(国際的二重課税の調整方式)が多国籍企業の利益還流に与える影響を実証的に分析した。2009年度税制改正において外国子会社配当益金不算入制度が導入され、内国法人が海外子会社から受け取る配当が一定の条件の下で非課税(益金不算入)となった。この税制改正の結果、海外子会社配当に関する国際的二重課税の調整方式が外国税額控除方式から国外所得免除方式に移行した。ただし使用料や利子など、配当以外の投資所得については益金不算入措置の対象にはならず、従来通り外国税額控除方式によって二重課税が調整される。 税制改正後は税コストの観点からは、法人税率や配当への源泉徴収税率が低い国では配当による利益送金が使用料・利子と比較して相対的に有利になった。そこで、配当源泉税率や法人税率の低い国に立地する海外子会社が税制改正に反応して、使用料・利子から配当へと親会社への送金手段を変更させたのかどうかを検証した。分析の結果、配当源泉税率が低い国に立地する海外子会社が税制改正後に使用料の支払いを減らしつつ、配当を増やすことで親会社への利益送金を増加させたことを示した。このことは、国際課税制度の変更が多国籍企業の利益還流手段の選択に影響を与えることを示唆している。 この研究に加えて、外国子会社配当益金不算入制度の導入が多国籍企業の様々な事業活動(利益還流、海外直接投資、利益移転、親会社の設備投資・株主還元)に与えた影響に関する近年の研究を解説したサーベイ論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多国籍企業の利益還流に関する分析を行い、分析結果をディスカッション・ペーパーにまとめて、公表することができたから。それに加えて、サーベイ論文も執筆して刊行することが決まったから。
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Strategy for Future Research Activity |
追加的なデータを用いて分析を行い、本年度出版したディスカッション・ペーパーを改訂した上で国際学術誌に投稿する。国内外の学会や研究会でこの論文を発表し、参加者から助言やコメントを集めて、論文を改訂する際の参考にする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で、学会や研究会に参加するために予定していた出張が全てキャンセルになったため。次年度から出張が可能になれば、出張のための経費を賄うために繰り越し分を使用する。
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