2020 Fiscal Year Research-status Report
Income receipt and health: causal effect in the short run and the long run
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20K01731
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井深 陽子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20612279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱秋 純哉 法政大学, 経済学部, 准教授 (90572769)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会経済状況 / 健康 / 労働供給 / 遺産相続 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度には研究計画の三つの分析の研究準備として、本研究で必要となる厚生労働省の「国民生活基礎調査」および「人口動態調査」の個票データの利用申請を行った。同時に、それらのデータ取得後に速やかにデータ分析に着手できるよう、データ構築のための下準備を行なった。あわせて、公表データである人口動態調査の集計データを用いて、データの基礎的な性質に関する把握を進めるとともに、他の補完的なデータ(交通事故に関する公表データ)により分析を精緻化する可能性を検討した。また、所得と他の社会経済状況が健康に与える影響に関する文献の整理を行った。さらに、分析3「所得受取の中長期の影響」の内容である所得の受取による所得効果が健康・消費・労働供給に与える影響を推定するために,遺産相続による所得増加に着目して分析を行った。中でも,本年度は遺産相続が労働供給に与える影響の分析にとくに時間を割いた。具体的には,慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター「消費生活に関するパネル調査」に基づいてイベントスタディ分析を行った。その際に,労働供給のほか,回答者の保有する金融資産を被説明変数とする分析も行った。回答者の金融資産も対象としたのは,相続前後に相続以外の資産ショックが無いことを確認するため,及び相続によって実物資産が増えてもすぐには生活費に充てられないので金融資産の増加の大きさの把握が重要なためである。分析の結果,まず,回答者の金融資産は相続後に平均で約500万円増加した後,緩やかに減少することが分かった。つぎに,相続の労働供給への影響については,就労する回答者の割合や労働所得が相続後に減少するという結果が得られた。この傾向はより高額の遺産を相続した回答者ほど強く,相続額500万円以上の回答者を対象とすると,相続後5年間の累計で約1,000万円の労働所得の減少が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症への対応による影響を受け、政府統計の個票利用申請の準備に時間を要しており、また研究の進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、引き続き分析3に関して、分析の深化を進める。具体的には、遺産相続が労働供給に与える影響をより正確に識別するために,相続を予想していた回答者や相続前に流動性制約下にあった回答者の存在を考慮した分析を行う。具体的には,相続を予想していた者と予想していなかった者について別々に相続が労働供給に与える影響を推定する。また,相続前の流動性制約の有無でも同様の推定を行う。この他,回答者が流動性制約下にあることを表すダミー変数を被説明変数とするイベントスタディ分析も行い,相続後に流動性制約下にある者の割合の低下が見られるか確認する。また、分析1「所得受取の短期の影響」に関する研究を申請中のデータ入手次第速やかに開始する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、新型コロナウイルス感染症への対応のため研究が計画通りに進展しなかったためである。使用計画は、研究データの購入と研究を効率的に進めるための研究補助への謝金に重点的に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)