2021 Fiscal Year Research-status Report
An Inquiry into the Municipal Government Decision-Making: Evidence from Local Assembly Transcripts
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20K01736
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川浦 昭彦 同志社大学, 政策学部, 教授 (10271610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 泰知 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50400073)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地方議会 / 議員 / 選挙 / 発言 / 得票率 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方政府の意思決定過程を研究テーマとして、地方議会での議員の行動の影響を分析した。公共選択の理論から導き出される仮説を実際のデータで検証することが目的であるため、議員の行動を表す変数を数値化することが必要である。そのため、議員の立法過程への参加の指標として、議会議事録に記録される各議員の発言文字数データを算出した(この過程では機械学習の機能を備えたプログラムを活用した)。この発言文字数データを当選回数・年齢・所属会派・議長職務の有無などの各議員の属性データと組み合わせ、議員が再選を目指した場合の次期選挙での得票率に影響を与えるか否かを検証した。 データは北海道小樽市の市議会について収集した。当該市議会は2000年以降のすべての本会議議事録を公表しているため、過去20年間の議事録データを収集することができた。この期間の統一地方選挙に合わせて行われた5回の市議会選挙での得票率を被説明変数として、その決定要因についてのパネルデータ回帰分析を行った。「バランスしていない(unbalanced)」パネルであるため、変動効果モデルにより推計を行った。 分析結果は以下の通りまとめられる。先ず、議員の立法過程への参加を反映する発言文字数の変数は、次期選挙での得票率に統計的に有意かつプラスの影響を与えることが確認された。つまり、議員にとっては議会審議に参加することは再選にとって有利であるとの仮説は支持された。また、この効果は4年間の議員任期全体で分析した場合よりも、任期後半について分析した場合に影響がより強くなる。これが示唆することは、選挙に近い時期に議会審議に参加することの重要性である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では多数の「市」を対象に議事録を収集し、横断面(cross-section)分析を行う予定であったが、コロナ禍で出張が困難になり、複数の地方議会の詳細を聞き取り調査により調べることが困難になった。そこで、先ずは研究手法の確立を主眼に置くことにして、研究分担者が在住の北海道小樽市の市議会を研究対象とすることにした。その議事録を利用可能な過去20年間にわたり収集し、議事録を時系列データとして整備することができた。その期間の市議会には複数回の任期を務める議員が含まれることで、議員に着目した分析を行う場合には、時系列(time-series)かつ横断面のパネル・データとして利用できる。実際にこうして整備したデータで仮説検証をすることが可能であることが確認できたため、今後の研究に有意義な分析手法が確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍での出張の困難さを前提にすると、多数の市議会事務局を訪問して議事録の作成について聞き取り調査を行う当初計画に戻ることは短期的には現実的ではない。そのため、これまでの研究で確立したパネル分析手法を適用できる市議会が全国にどの程度存在するか、今後は確認する。その数によっては、それらの自治体を網羅的に分析するための予備的なデータ収集を行うことができる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴い国内・海外の出張を控えたために予算執行が滞った。出張に支障が無くなり次第、計画通りの調査を行う予定である。
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