2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01741
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山口 昌樹 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (10375313)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際資本移動 / アジア / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアにおける国際資本移動の実態把握という本研究における基礎調査に取り組んだ。資本移動の動態を測定するためIMFのBalance of payment統計から資本収支の三項目(直接投資、ポートフォリオ投資、その他投資)に焦点を絞ってグロスの資金流出入を観察した。 また、IMFのCoordinated Direct Investment SurveyとCoordinated Portfolio Investment Surveyを利用することにより資本流出入の相手国の順位と域内比率の変化という観点からも国際資本移動を把握した。とりわけポートフォリオ投資については株式投資と債券投資に分別して詳細に動向を観察した。 本研究のASEAN4カ国による対外投資に関する観察から得られた知見を以下でまとめる。FDI、そしてASEAN域内向けFDIは顕著に増加しており、FDIという安定的な性質を有する資本移動のリンケージがASEAN域内で着実に構築されていると判断できる。証券投資は金額の観点からするとASEAN4カ国からの域内投資の増勢がはっきりと確認できる。しかし、租税回避地や国際金融都市への投資が多いため国際資本移動の安定に対する寄与はFDIほどではないと考えられる。現地通貨建て債券市場はASEAN4カ国において長期資金の受け皿として大きくなりASEAN域内へ投資する環境が整備されたと言える。また、国債市場に加えて社債市場が拡大している点は投資家にとっての魅力が高まったと言えるものの、社債についてはマレーシアを除くとまだ長期運用の投資先として十分には育っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載した通りのスケジュールで研究成果を取りまとめることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題であるが、懸念が残る証券投資が逃げ足の速い資金だとすれば国際資本移動の安定性はまだ実現していないことになるため金融市場にストレスがかかった場合の資本移動の安定性を分析していく。具体的には金融ショックに対する反応を測定・比較することによって域内マネーフローの増加によってアジア金融市場の安定性が高まっているかを検証することになる。
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Causes of Carryover |
新型肺炎の流行のために予定していた学会への出張を取りやめざるを得なかったため。 次年度使用額については感染状況を考慮しながら出張旅費、データベースの購入代金として使用する計画である。
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