2022 Fiscal Year Research-status Report
金融市場における高頻度取引の発展が市場参加者の厚生に与える影響についての研究
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20K01742
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
西出 勝正 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40410683)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高頻度取引 / ディレクショナル取引 / マーケットメイク取引 / マーケット・マイクロストラクチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は以下の実績を得ることができた. 1) 企業の合併・買収の最適戦略を理論的に考察した論文を査読付き論文雑誌に掲載することができた.この論文の内容は,近年合併が進んでいる証券取引所の動向に1つの示唆を与えるものであり,本科研費の研究課題にも関連する. 2) 高度金融技術を用いて新しい情報が到来した際に一早く自動注文を入れることで利潤の獲得を目指す,いわゆるディレクショナル取引を研究対象として考察した論文については,残念ながら再投稿した雑誌より不採択との連絡があった.その後,査読で指摘された内容を反映・改訂した上で別の査読雑誌への投稿が完了した.当該研究は,高頻度取引が必ずしも市場流動性や効率性に悪影響を与えるものではないことを示した点が学術的な貢献があると考えている. 3) 新しい理論研究として2020年度から取り組んできた高頻度取引を活用したマーケットメイク取引について,海外の研究者との議論などを経た上で最終的に論文を完成させ投稿することができた.こちらも現在査読雑誌にて審査中の状況である.当該論文は,モデル化が複雑なマーケットメーカーの競争下での意思決定問題を,重要な要素のみを抽出した点に優位性があると考えている. その他,マーケットメーカーの参加制約と流動性との関連を考察した選考論文の拡張や関連研究として複占市場における企業の立地競争問題に取り組んでおり,近々論文が完成予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に関連論文1件が査読付き論文雑誌に採択された.また「研究実績の概要」にて記載の通り,理論研究2件が査読付き論文雑誌にて審査中である.近年は論文採択決定までに時間を要する傾向にあることから,研究期間内に採択されない論文が出てくるのも已むを得ないと言える.新しい理論研究も2023年度内には論文雑誌に投稿するまでに研究を纏めることができた点は評価できると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度1年間の期間延長として認められたため,現在審査中の完成論文2件の査読付き論文雑誌への採択を第一の目標にして研究を進めて行く.不採択となった場合にも査読報告書の指摘事項を反映させてより質の高い論文に改訂した上で早期の採択を目指す.また,現在進行中の論文もできるだけ早い時期に論文を完成させて投稿する予定である.
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Causes of Carryover |
2020年度から続く新型コロナウィルスの影響で国内外の学会における発表を目的とした出張が予定を下回ってしまった関係で執行金額が当初計画よりも大幅に少なくなった.但し,滞っていた出張も可能になり,2023年度には全額執行を計画している.
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